鉛筆を置いて頬杖花の雨
/花の雨枝伝い来る雨んだれ
/男らをさみしがらせて夕桜
/掃苔そうたいや桜の花の石の上
/天井に花ある下に射干の花
/好きだよときみには大き桜餅
/ベンガラや甘茶をかけるお釈迦様
/初蝶の今年の畝に身繕ひ
/木蓮の花の音聞く明日かな
/気が付けば君子闌に薄明り
/雪柳先立つ人に何告げむ
/俤やいついつまでも雪柳
/松が枝に芽吹くをじっと見てゐたり
/うかれ猫けふはどこまで行ったやら
/入園式ちゃんとお返事できました
/真新しい靴を三和土たたきに含羞はにかみぬ
/ママの手を離さぬ子にもケーキかな
/花満ちて夜の気配に雨になり
/花見時明日の天気娘にTEL
/花大根武道館への道の辺に
/花大根いくつも揺れて涼しかり
/タンポポの放恣そのまゝ喜べり
/別れめと嘉よみす杉の戸開け放ち
/身衣の重たくなりぬ花の雨
/春は貝とはたれが云ったのかいな
/激越な怒りサリンや花に雨
倉石智證