部屋の中では帽子をかぶろう

色とりどりの

じ様は緑とか、ば様は黄色とか

ぼくはむらさきで、妻はピンクだ

ぼくは冷静さを装ふ

まかり間違ってもぼくが黒であってもグレーであってもいけない


むかし大殿様が戦に出かけるとき

やっぱり血の色を選んだ

やがてすぐにその色は確かなものになるが

おー、アイデンティティが

DNAが横切る

たいそうな鎧を着込んで

だから、ぱっか、ばっか

部屋の中では帽子をかぶろう

あえて、ぱっかぱっか

肢が萎えてしまったからあえて緑に

おしゃべりが好きだからピンクの桃色に

ぱ様は今でも愛しているよとくどくどと

だんだんだんだんに色に染まる

そんな風にして死ぬ時がだんだん迫ってきた者同士が


部屋の中では帽子をかぶろう

年の差が分かったり

愛し方の隅々までちょっと考えさせられたり

赤や黄色や紫や

まだなかなか現れない澄んだ青色とか

あんなにもベッドに横に結わえつけられていた眠り上手のじ様も

ふと、元気に立ち上がり

みんなしてまぼろしのやうに

そんな風にして人生とか一生があんなにも大事なものだから

みんな今夜は好き好きにいろいろな帽子を被って

もう歳を取った部屋部屋を

色とりどりの帽子が挨拶をかわし

断固としてわたしは青を選ぶ

ピンクや濃い緑

帽子をとって挨拶をかわしながら

みんなこんな古びた百姓家で

みんな帽子を被ろう

そして部屋中をいったり来たりするのだ

元気になる


倉石智證