日本

景気後退で大きな富が失われたマイナスショックは誰が負担するのか

。第一は株主、次は経営者だが、最終的には労働者も負担する。

「賃下げが嫌」となると雇用を減らすしかなく、まず新規採用を止める。

若い世代が被害者になる。

会社がつぶれれば「賃上げ」も「雇用」も、はない。


物理的側面とはGDPと労働投入量との関係にも表れる。

実質GDPが▲(マイナス)になった時、

労働投入量はパーセンテージでそれを上回るマイナスで調整される。

過去のケースでは(91-93年、97-99年、2000-02年)では顕著に、

そして現在07-09年は調整中であると思われる。

労働投入量は=雇用者数+総労働時間で示され、現在は企業の残業短縮による対応が進んでいるが限界に。

本格的なリストラが始まるだろうと思われる。

(「日経ゼミナール09,4/29)


製造業の派遣解禁を議論した2003年、株価が=8000円程度で低迷する今に重なる。

解禁は雇用拡大の切り札だった。

日本の失業率は=3%台まで下がり、企業の海外流出を抑えた面もある。

制度の行方は=46万人の雇用に影響する。


本原仁志

人材派遣大手スタッフサービス社長

「製造業、事務職を合わせて全国を見ると、九州、沖縄の派遣雇用は底堅い。

観光・サービスなど人の移動に伴う需要を含め、アジア方面とのつながりが大きい地域だ。

世界と国内を結ぶ軸の向きによって、微妙な地域差が出ている」

「バブル崩壊、三つの過剰を経て日本企業は仕事の中身を吟味、

アウトソーシング(業務の外部委託)や派遣人材を活用するようになった。

派遣労働者の増加と生産性の向上は、表裏一体の関係にある」

「製造業の求人が急減、一方、飲食、販売、介護などのサービス業では人手不足だ。

雇用のミスマッチに対して、求職者を振り向け、

職種の転換に必要な技能教育がいままで以上に重要になっている」

「ワークシェアリングに関しては意思決定などのコア業務を担う正社員と、

標準化された作業を担当する派遣社員では、仕事の中身と責任が異なる。

一律論で制度を作っても、実際には難しいだろう」


日本の<労働基準法>には欧州など一般的な「同一労働・同一賃金」という文言がない。

年功序列の雇用システムの維持を掲げる労働側が反対したためだ。

仕事を分かち合う「ワークシェアリング」も極端な賃金格差を残したままでは限界がある。


組合が力を持ち過ぎると、企業は非正規雇用を増やすようになる。

バブルの崩壊で日本企業は人件費を切り詰める必要に迫られ、

パート社員、派遣社員、契約社員といった非正社員が急増した。

労働者に占める非正規比率は=37.8%(07年)に高まった。


「多様就業型」主婦、在宅勤務、短時間勤務など多様、就業増に結びつく。

「緊急対応型」は景気悪化による失業者の発生を抑えることを主眼に。

文字通りシェア、時間と賃金を分かち合う。正社員の反対は=68%と抵抗が強い。


雇用問題では慢性的な人手不足の

介護、医療、農業、技能を要する製造業、森林管理などの分野へ、

どう人材を誘導するかがカギ。


キャリア形成のうえで最初から不利な環境に置かれている非正規労働者

(景気回復過程で03年以降転職が活発だったのは、非正規従業員で働く若年層だった)が

転職で成功するのはなおのこと難しい。→現役世代の


少子高齢化の進展で30年までに労働力人口(15-64歳)が→1000万人以上減る。

高齢者の労働市場参入を円滑に進めないと、生産性は低下するばかりになる。困高齢者


学校(例えば高校)と企業との繋がりが希薄になった。

心理的な繋がりの「場」が喪失した。

人的資本開発システムの喪失でもある。


再犯率は一般刑法犯の検挙者の4割に達し、

犯罪をした人を再生させる策が治安向上の鍵でもある。

家族や社会から疎外される彼らには

住居を手当し、

働く意義を教え、

就業の機会を与えて経済的に自立させることが肝要だ。

全国には善意の献身的篤志家として犯罪者の更生に携わる保護司が=5万人いる。

だが彼らの雇用に協力する事業者は=6500で横ばいの状況である。


雇用保険未加入が=1006万人。

制度改革は(週=20時間以上、1年未満6ヶ月以上)=148万人どまり。

=858万人が対象外に。

失業給付への依存度が高まるモラルハザードや、

扶養される人や経済的余裕のある人たちまでへの拡大も懸念される。


日本のセーフティネットは低所得のワーキングプアを想定していない。

失業保険も充分でない。

賃金が増えてくれば減額率を下げるような給付付き税額控除の仕組みなどが必要だ。

(大竹文雄・大阪大学教授09,2/7日経)


「派遣村」

昨秋から派遣契約を切られた人は=2割、そのほかは日雇い派遣で収入が減った人や野宿の人たち。

⇒生活保護を申請した=200人を超す「村民」は直ちに認定を受けた。

資産や収入の調査を簡略化し、10日以上かかる認定を人により15分の面接で済ませた。

一方でハローワークが臨時窓口を設けて紹介した=約4000件の

寮付きの求人紹介には大きな成果はなかったという。

「自立や就業支援ではなく生活保護でよかったのか」、

「(与党、野党)どちらが講堂開放に貢献したか」という功名争いなど諸処に疑問が残った。

⇒安全網は「職探し」「自立」「住宅支援」「職業訓練」。


生活保護世帯

今年度は月平均=120万世帯に迫る勢い。

1992年度=58万6000世帯の=2倍の水準。

低所得の単身高齢者の急増。雇用悪化の追い打ち。

09年度予算で前年度比=4.7%増の=2兆585億円を計上。


失業者の急増で雇用のセーフティーネットの不備が表面化。

このため政府は追加経済対策で雇用の安全網整備向けに=2兆5000億円の事業費を用意。

また政府は失業中の生活保障や職業訓練の充実など雇用を軸にした

安心保障の実現などを念頭に<安心社会実現会議>(5/15日)を開いた。


「地域魅力発見バスツアー」

08年度の第二次補正予算に計上した雇用対策の一つ。

政府が宿泊費とバス代を支払い、若者や中高年の仕事探しを助ける。

総事業費=5億円。全国で約100回のツアーを企画し、3000人程度の利用を見込む。