■オランダ
労働組合は景気後退なのに賃上げを求め、経営者は真っ先に雇用削減に動く――。
1982年、オランダ「ワッセナー協定」。
・労組は賃金抑制を受け入れ、
・経営者は雇用機会を増やし、
・政府は財政支出を抑えて減税を実施する。
高失業率を克服し、企業の競争力をたかめるため、
政労使がそれぞれ痛みを分かち合う「誓い」をした。
これが基になり、正社員の短時間勤務を認める本格的なワークシェアリングが導入され、
経済は好転した。
当時オランダは、失業率が=10%前後もあり、
他国から「オランダ病」と揶揄された不況の最中。
それが新雇用モデルの導入で企業の競争力は強まり、雇用も創出。欧州の優等生になった。
働く女性が増え、多様な働き方も浸透した。
⇒正社員の短時間勤務→雇用創出型
⇒一人当たりの労働時間を減らす/雇用維持型
■欧州
欧州連合(EU)諸国では1993年、
所定外労働時間も含めて就業時間が週=48時間を超えないことを定めた
労働時間指令が適用され、
この指令の適用除外を選択した英国を除き、働きすぎの問題はほぼ存在しない。
(山口一男・シカゴ大学教授08,12/26日経)
欧州では自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)が
1994年に国内工場で導入した「週休三日制」が有名だ。
業績不振に陥ったVWは当時、国内工場で=3万人が余剰とされたが、
休日を増やすことで人員削減を回避した。
しかし、そのVWも日本車メーカーなどの攻勢を受けリストラを迫られた。
2006年には早期退職などで=約2万人の削減に踏み切り、
追加手当なしで勤務時間が延長されたことで
07年から週休三日制は撤廃された。
ドイツ
企業は直接雇用するという傾向が強いが
(期限付き契約で直接雇用)、08年末「操業短縮手当」の給付を始める。
もともと失業保険を財源とする季節変動の激しい建築業などのための制度。
これを派遣会社など他業種にも適用した。
派遣労働者は派遣先がなくなっても当面、派遣会社からの解雇は免れ、
所得がなくなることもない。
企業はまず、有給休暇の前倒し、労働時間の短縮などで働き方を調整。
労使とも苦しいが、解雇が抑えられることで消費の落ち込みや社会不安が最小限に抑えられ、
景気回復につなげやすい。
(吉田恵子・ドイツ在住ジャーナリスト)
ドイツでもストライキ、鉄道・航空で実施。
独、1月の失業率=8.3%=348万9000人となった。
ドイツでは生産調整のために企業が時短勤務を導入すると、
従業員は目減りした給与の最大=67%を補填する「時短手当」を受け取ることができる。
独政府は支給期間をことし1月には12ヶ月→18ヶ月に延ばしたばかりだが、
これをさらに延長し→2年間までとする。
ドイツの失業率は(08,11月→09,3月)=7.1%→7.6%➚。
支給期間が7ヶ月を超える時短勤務となった場合は
社会保障費を政府が肩代わりする措置を拡大するほか、
時短と通常勤務を繰り返す企業には手当の申請手続きを簡素化する。
フランス
仏政府にとって若年層の失業対策は長年の課題でもある。
06年には新規雇用を促す目的で解雇が容易な労働契約の導入を目指したが、
労働組合や学生の猛反発で撤回せざるを得なかった経緯がある。
今回の若年層対策では=13億ユーロー(約1700億円)の予算枠を用意し、
10年までに若年層を中心に=50万人の雇用創出を見込んでいる。
米国
米国で過剰就業者の割合が低いのは、残業が雇用者の希望に即しているからだが、
その理由は時給者にはわが国より手厚い超過勤務手当の制度があり、
この制度が適用されない管理職者や専門技術職者には業績に対する
昇給・昇進と言う成果へのインセンティブ(動機づけ)が制度として発達しているからだ。
日本は「滅私奉公型」残業のあり方。
正規雇用と終身雇用の日本では正規雇用者と企業との間には「保障と拘束の交換」がある。
すなわち企業は正社員の雇用を保証する代わりに、
その代償として長時間残業や頻繁な転勤を求めると言われてきた。
▼雇用環境が悪化する中で、
潜在失業や不完全就業が増える中で過剰就業が一部の雇用者に集中。
就業時間のミスマッチ(「もっと働きたい」「時間を短くしたい」)拡大という
外部不経済を生み、女性や非正規男性雇用者の人材活用を妨げている。
⇒「滅私奉公的賃金制度」の見直し。
(山口一男・シカゴ大学教授08,12/26日経)