私の友人は7年前にガンで亡くなった。

三月弥生、3/12日、風が強く寒い日だった。

風で振り払われたのか、その日の夜はすごい星空だった。

奥方さまからお手紙が届いた。

奥さんは東京二期会のオペラ歌手。

七回忌のコンサートをレストランで開き、故人を偲ぶ会にしたいと――。


悦子さまへ

ご無沙汰いたしております。
お変わりなくお過ごしのことと思ひます。
寒いですね。
昨日は雪が降った。
大きな雪の一片一片でした。

もうすぐ12日ですね。
早いものです。
F君は今ごろどこいら辺りで飲んでいるんでせう。
やっぱりあるこほるはウィスキーかしらむ。
好きだったもんねへ。
ぼくらの仲間もぽちぽち集まって、
古い話しなんど、F君のこともをりをり話したりします。
みんなそれ相応に齢をとりました。

今月はハードな月です。
弥生は桃の節句から、春爛漫、桜花咲く・・・
でも、お伝へしてなかったのですが、
実は、あの後、3/29日、私のかみさんの弟が縊死しました。
午前6時、古さとの山を少し入ったところで――
ちょうど、零度、だったさうです。
寒い日でした。
48歳だった、つうに。鬱病でした。
上が高一、下が小六、男子二人と10歳はなれた妻が残されました。
一家、離散ですね。
かみさんは息子二人を連れて、義弟の家を出て行きました。
かみさんも、ひどい、鬱になってしまったのです。
山を見ては「怖い」と云って、
夜中に妻の布団に飛び込んできたときもありました。
木の芽どき、には少しはやいものの、
弥生も人々の生理にあやしい時ならぬ圧迫を
与えるもののやうです。

弟ともども、F君のこともかみさんの実家で、
深々とまた祈るつもりです。
出席はできませんが、
どうぞ素敵な命日のコンサートをお披露目ください。
また、パンフレットも送ってくださいね。
出不精になりましたが、
そのうちまたゆるりと、出かけるつもりでいます。

智證