「学校の先生」という存在は誰もが知っているものであるが、

それは自らが学生の時に教室で見た姿だけであり、

職員室でどのようなことをしているのか。という部分あまり知らないのが世間だと思う。

だから、教職員の仕事にはどのようなものがあるのかを

できるだけ具体的に紹介してみようと思う。

 

務める高校にもよるが、基本的に教職員も8時間労働である。

たとえば、勤務時間は8時半〜17時半(間に一時間の休憩)というようなものである。

 

1 教科担当

いわずもがな、これを担当しなければならない。

大抵の私立高校は月〜金の6時間(7時間ある日もある)と、土曜の4時間。

生徒たちは最低でも一週間で合計34時間の授業時間がある。

教科担当者はそのうち一週間で15〜17コマを担当するのが一般的である。

つまり、時間割の50%程度で、各教職員はどこかの教室で授業をしているということになる。

授業していない時間のことを「空き時間」と言い、その時間を利用して以下の業務がある。

 

ア.授業およびその振り返り

3クラスの英語を担当した場合、同じ授業を必ず3回しなければならないため、

あのクラスで教えたけど、このクラスでは教えていない。ということはあってはならない。

また、マンモス校の場合、同一学年で複数の同一授業担当者がいるため、

授業内容の齟齬がないように、綿密な打ち合わせを行なっている。

 

イ.小テストの作成・採点・記録

学期ごとの成績を算出するために必要なデータのため、

これをうやむやにしてはいけない。

昨今は小テスト問題作成のデータベースがあるため、作成はそれなりに簡単にできることが多い。

しかし、データベースも実は信用できないため(同じ問題が何度も出題されていることがある)

必ずチェックをする。

そして、それを各クラス人数分印刷する。

印刷専門の職員がいる学校もあり、そうした学校では、

「○月○日3時間目までに○枚お願いします」と注文をしたら、印刷してくれる。

ただ、そういう高校に務めたことは今までに1度しかない。

 

ウ.次の単元にむけての準備

前項アに引き続き、次の単元・授業の打ち合わせを担当者間で行う。

数学の場合、「二次関数」を何時間程度で扱うのか。みたいに。

こうして、ア〜ウのことをまとめ上げて、時期が来たら定期考査の問題作成をする。

個人によっては定期考査を先に作成しておき、それが解けるように逆算して

授業計画をする教職員も存在している。

 

エ.教科会議

使用している教科書はこの出版社で適切なのか。問題集・参考書はこれで適切なのか。

各学年の模試の成績。

検定(英検・数検・漢検など)の日程調整と運営。

などの議題で会議が行われている。

時期によるが、新年度採用に向けて、送られてきた履歴書の書類審査や採用試験の実施、

教育実習生の受け入れ審査などもこの会議がベースとなっていく。

 

このほかにも、中学入試・高校入試の問題を作成するためのチームが編成され、

およそ半年ほどかけて、入試問題を作っている。

 

 

 

2 学年・担任業務

教科担当以外に任命されるのが、担任業務である。

担任は授業以外にクラス生徒の管理を主な仕事としているが、この業務が多岐にわたるため、ひとつひとつを細かく説明するのはかなり困難である。やってみる。

 

ア.毎日の出欠状況(欠席日数・遅刻回数・早退回数)管理

朝礼で欠席確認をするわけであるが、事前に欠席連絡がないにもかかわらず、

教室にいない生徒がいた場合、所在確認を一時間目がはじまるまでにしなければならない。

欠席の連絡をしていないのか。それとも家は出たがどこかで倒れているのか。など

「なぜその生徒がここにいないのか」という状況を把握しなければならないのである。

よって、自宅に電話をかけ、保護者に安否確認をするわけである。

なぜここまで躍起になるかというと、出席日数が規定回数に到達しない生徒は

進級が認められなくなってしまうからである。

 

イ.保護者対応

クラスで何らかのトラブルがあった場合の連絡や報告は欠かせない。

学校から保護者への連絡は生徒を通じてプリントで知らされることが多い。

しかし、生徒がそのプリントを保護者に渡しておらず、学校やクラスのことが

正確に保護者に伝わっていないということがしばしばある。

ならば、今の時代、メールによって保護者に直接連絡が行くようにすればいいだろうと思われるだろう。

もちろん、学校側も対策を講じ、保護者に直接メールが届くシステムを利用しているのだが、

肝心の保護者がそれを「見ていない」「気づいていない」という問題が発生しているのが現状。

にもかかわらず、文句だけは一丁前に言ってくるのである。

 

保護者からどのような要望・苦情があるかなどは、

ケースバイケースだからここであげつらうことはナンセンスだとは思うが、

愚痴としていくつかを例にあげる。

 

「ウチの子が数学の先生からひどいことを言われた。なんとかしろ。」

「ウチの子が社会の授業がわからないと言っている。教え方が悪い。担当者を変えろ。」

「ウチの子があの子から叩かれたと言われている。本当か。本当ならばどうしてくれる。」

「ウチの子がまだ帰ってこない。どういう指導をしているんだ。」

 

ぶっちゃければ「んなこと知らん」である。

 

そのほかにも、時期は様々であるが「三者面談」「保護者会」などの業務がある。

もちろんこれらは、事前に資料を準備しなければならないし、事後指導のための記録、報告は当然のこととして学年会議で報告していかなければならないため、会議資料の作成は毎日のようにある。

 

ウ.学年会議

学校行事として遠足や修学旅行や音楽祭や文化祭や体育祭や進路集会などなど。

およそ月に一回程度の割合で学年全体で参加する行事がある。

その計画と運営をこの会議で練り上げていく。

また、各クラスで抱えている課題のある生徒(不登校・人間関係のもつれ・いじめ)の情報を共有し、

担任だけが抱えることなく、学年全体でどのように対応していけばよいかということが話し合われている。

 

誤解を恐れずに言えば、「大丈夫。誰にも言わないから安心して先生だけに教えて。」という言葉は嘘である。

しかし、状況を共有し、全体でフォローするから解決に向かう。

 

私は「先生が嘘ついた」とあとで言われたくないので、

「君の置かれている状況をなんとかしたい。

まずは私だけでなんとか君に協力しようと思う。

でも私一人の力ではどうにもできないかもしれない。

その時は学年の先生たちに協力してもらうことも考えている。

いろんな先生に知られることがつらいかもしれないが

一緒に乗り越えてみないか。

もちろん、先生たちが知ったからといって、それで君が不利益を被ることは

ないように、全力を尽くす。」

ということをあらかじめ生徒に伝えるようにしている。

 

担任業務を命じられていない教職員(副担任や学年付きと呼ばれる)は、

面談など主要な業務以外で担任の代打を務めることができるよう、

各クラスの担任と連携をとり、意思疎通を欠かすことはできない。

学年主任は各担任がどのような困難を抱えているかを確認しつつ、

生徒はもちろん、教職員の管理をしている。

 

教職員の仕事内容(顧問と分掌編)につづく