ダイヤ改正 ~誕生と喪失のパラドックス~

大阪駅改札内に大きく掲示された、北陸新幹線の敦賀延伸開業のPR垂れ幕。

撮影時期が2月下旬なだけに、期待と焦燥が入り混じります。

 

 年訪れる3月中旬の「JRダイヤ改正」。

新型車両のデビューや新ダイヤの設定など新しく生まれるものへの期待感や新鮮さも感じられれば、今まで長く続いてきた車両や列車名の引退/消滅など古く去りゆくものへの寂寥感や物悲しさも感じられます。

「ダイヤ改正」は鉄道ファンの好みが分かれる「複雑な感情を持つイベント」とも捉えられるでしょう。

 

 今回は、テレビやネットなどのメディアが最も大きく取り上げている「北陸新幹線の金沢~敦賀間延伸開業」に関連して、2024年3月16日のダイヤ改正で発着駅が「金沢」から「敦賀」に短縮されることになった、特急「サンダーバード」と「しらさぎ」に乗って金沢へ旅行に行った模様をお送りします。

  関西から北陸へ一直線!サンダーバード

午前10時ごろの大阪駅。喧騒な雰囲気は東京と類似しているように感じられます。

 

 まずは大阪駅から、特急「サンダーバード」に乗って金沢を目指します。

 

11番線乗り場の改札階(左)とホーム階(右)の電光掲示板。

「金沢」や「和倉温泉」が今後に表示されないと思うと、どこか寂しいものがあります。
 

 今回私が乗車しましたのは、大阪を10時42分に出発する特急「サンダーバード」17号 和倉温泉行きです。今年の元日に発生した能登半島地震の影響で、しばらくは和倉温泉より手前の「七尾」が終着駅となっていましたが、2月15日以降のダイヤで和倉温泉までの通常便が運行を再開しました。

大阪駅11番線ホームに掲げられた、金沢駅名物の「鼓門」。

このポスターも、ダイヤ改正以降には取り外されてしまうのでしょうか?

 

 

10時35分、1日1本しか運転されない七尾線直通の  (右)金沢止まりの後ろ3両は681系V13編成。

特急「サンダーバード」17号 金沢/和倉温泉  (左)和倉温泉へ向かう先頭6両は683系W36編成。

行きが到着しました!

 

ここからは、JR西日本から経営分離される敦賀~金沢間の風景をご紹介します。

敦賀駅3番線ホームに設置された、時速90km/hの速度制限標識。

よく見ると見覚えのある系式が…!

 

12時33分、福井駅に到着。奥には名古屋へ向かうしらさぎ8号が停車しています。 

 

 のどかな田園風景が広がります。(森田~春江)  撮影地で有名な「丸岡ストレート」。北陸新幹線の高架線が遠くに見えます。(丸岡~芦原温泉)

 

      12時45分、芦原温泉駅に到着。                                      北陸新幹線の高架が一時的に離れます。

北陸新幹線はこの真上に到着するようです。                                                 (大聖寺~加賀温泉)

 

 

12時55分、加賀温泉駅に到着。                           小松駅を通過。北陸新幹線の乗り換え駅を通過

北陸新幹線のホームが隣接し、景観に変化が見られます。      する瞬間を味わうことができるのは、数少ない経験ですね。

 

金沢駅到着前、試験走行中の北陸新幹線とすれ違いました。

特急と新幹線のすれ違いは、もう二度と見られないでしょう。

 

13時20分、金沢駅に到着しました。この日私が乗車したサンダーバードは、信号トラブルの影響で遅れが生じたため、7番線に停車している681系が代走として「サンダーバード17号 和倉温泉行き」を引き受けてくれました。

 

代走を引き受けた681系は、北越急行から転属してきた2000番台「N02編成」です。

直江津まで路線が伸びていた頃の特急「はくたか」を彷彿とさせますね。

 

  中京と北陸を結ぶバイタルランナー「しらさぎ」

1964年(昭和39年)のデビューより、名古屋~金沢・富山を北陸本線経由で結んできた特急「しらさぎ」。岐阜から高山本線に分かれる特急「ひだ」と共に、中京圏と北陸を結ぶ「バイタルランナー」として多くの鉄道ファンを魅了してきました。

運行開始から今年で60年を迎える「しらさぎ」ですが、ついに明日のダイヤ改正で運行区間が敦賀まで短縮され、サンダーバードと共に「北陸の代表特急」から一転、「新幹線へのアクセス列車」としての役割を担うようになります。

ダイヤ改正は「時代の流れ」を感じさせる瞬間とも言えるでしょう。

 

今回は、金沢からの上り「しらさぎ」14号に乗って名古屋へ向かいました。

特急「しらさぎ」3号として金沢へ向かう、683系8000番台N03編成。

(2023年8月撮影 名古屋駅)

 

 

私が乗車した特急「しらさぎ」14号 名古屋行きは、金沢駅1番線からの発車。

北陸新幹線のホームは、この1番線の右隣に隣接しています。

 

1・2番線ホームの電光掲示板です。「名古屋」「米原」などの文字も見られなくなるのは非常に悲しいですね。

 

特急「しらさぎ」14号を担当する、681系です。早速乗ってみましょう!

(所属車庫/編成番号の特定はできませんでした。申し訳ございません。)

 

 

松任駅を通過。ここには、かつて北陸の鉄路を彩っ  JR貨物の「南福井貨物駅」を通過中。ダイヤ改

た車両たちが留置された「松任工場」がありました  正以降にこの路線を走るJRの車両は、貨物列車

が、JR西日本の金沢~敦賀間の経営分離により閉所  のみということになります。

されました。工場とはいえ歴史ある場所なので個人

的には残してほしいと思いました。

 

 

上りは生憎の雨天で残念な景色になってしまいまし   17時47分、武生駅に到着。北陸新幹線の新駅「越

たが、田園風景の穏やかさは雨粒をも光景に巻き込 前たけふ」駅はここから少し離れた場所にありま

みます。                    すが、新駅の立地に対して越前市の方々はあまり 

                        嬉しくは思っていないそうです。

 

 

18時44分、米原駅に到着しました。ここで座席を 米原を出発して約1時間、終点の名古屋駅に到着し

くるりんぱ!させまして、進行方向を変えて東海  ました。大阪や金沢にいる時とはまた違った忙しな

道本線に入ります。JR東海の特急列車の醍醐味は  さが感じられました。都会とはいえ地域差がそれぞ

こうした「小さなアクティビティ」の体験とその  れにあり、町自体の個性があるように思いました。

希少性にあるのではないかと思います。

 

 

【最後に】新しくて古い ~"消滅"より"継承"~

今回のブログは大変長い内容でしたが、いかがだったでしょうか。

北陸地方を代表する特急「サンダーバード」と「しらさぎ」。いずれも、1964年(昭和39年)のデビューから60年の長きにわたって歴史を紡いできた名列車たちです。

※「サンダーバード」は元々、「雷鳥」としてデビューしました。

 

今年のダイヤ改正では区間が敦賀まで短縮されることになり、列車名が消えるまでには至らなかったものの、その存在感は新幹線よりも薄くなってしまったように感じられます。

 

しかし、こうした在来線特急の輝かしい存在があったからこそ、新幹線の活躍が支えられているとも感じました。

現に北陸新幹線の「かがやき」は、北陸本線の特急に使用された名前で、当時の上越新幹線「あさひ」号に接続するためのアクセス特急でした。また今日のダイヤ改正から「サンダーバード」と「しらさぎ」の両列車からの接続列車となる北陸新幹線「つるぎ」は、かつて大阪~新潟を結んだ寝台特急の名前でした。加えて「はくたか」も、ご存じ北越急行線経由の高速特急から受け継がれた名前です。

 

このように現在活躍する鉄道車両には、どこかしらに過去の栄光を残しつつ次の時代へ向けて前へ前へと進んでいるのですね。

 

過去の車両には過去の良さを残しつつ、未来の車両には新たに加わる技術にも引き続き注目していきましょう!