昨夜、夫が「心臓痛い」と言い出した。

午前中一時を少し過ぎたぐらいに、胸を押さえて、顔をしかめている。

「横になったら?」

との問いかけにも応えずに、険しい顔をしている。

心筋梗塞…。

すぐに頭をよぎる。

6年前と同じ事が起きるのだろうか。

慎重に様子を伺うが、夫は救急車を拒否する。

「救急病院に行く?」

と聞いてみたが、夫は首を縦に振らず。

大丈夫かな?

横になった夫に布団をかけた。


2018年、3月4日。

午後の早い時間に2人でスーパーへ買い物に行って帰って来た時の事。

急に椅子に座り、胸に手を当てて、夫は何やら苦しがっている。

どうしたのかと問いかけたら、

「逆流性食道炎の薬、飲み忘れたから、その痛みだ」

という。

そうなのかい?

顔の表情だけでは、実際どのような痛みかは分からないので、食道の炎症だと本人が言うならば、そうだと思うしかない。

痛みのある箇所は、「心臓」の位置なのに、私達2人は、心臓の発作の可能性を疑わなかった。

病院に行くかと問いかけるも、夫はどうしようか考えている様子。

しかし、痛みは途切れる事なく続き、あまりにも苦しい。とりあえず消化器科の病院に行くことにする。

辛そうにしていたので、優先的に診て下さった。

有り難い。が、夫はすぐに診察室から出て来た。

「大丈夫だったの?」

表情を見る限り、そうではないらしい。

顔は汗をかいている。

絞り出すように説明する夫が言うには、

「逆流性食道炎の発作で、汗はかかない」

と言われたという。

夫のかかりつけの病院は、循環器科。

「早くその病院へ!」

「むしろなぜ、すぐそちらに行かないのか」

そう言われると、私達は、ようやく事の重さに気付き始める。

ここからそう遠くない病院へ、私の運転で、その病院へ向かう。

私は焦っていた。

運転は気を付けながらも、少しスピードを出して走っていた。