20年ぐらい前、実家に犬がいた。
犬は、でっかいのやら、小さいのやら、沢山の犬種がある。私が引き連れてきた猫達とのバトルをイメージしてもらう為、種類を言わせてもらうと「トイプードル」である。
名前は「タロウ」。
母、ヒデコが、命名した。
私は一度、猫3匹を連れて、短期間だけ出戻っていて、この時タロウは初めて「猫」を間近で見たはずである。
犬は散歩するから、外で他のワンちゃんに出会うけど、猫に外で遭遇するというのは、あまりないと思う。
しかも3匹。
いきなり同じ部屋に入れたら血を見るかもしれないから、ドア越しのご対面であるが、もう私の猫達は、タロウをガン見している。
猫の鋭い目は、猫が苦手な人もそうだし、犬も恐らく怖いだろう。
「ホラ、ダメよー!部屋に帰るよ」
と私の3匹を追い立てる。
同じ空間にいなければ、問題なし。タロウも、自分の空間に、訳のわからない生き物が入って来ないことを知ると、いつも通り「遊べ遊べ」と吠えている。
私が部屋に入って行っても、タロウは、私にせがまない。
「散歩する?」
と言って連れて行かない「散歩するするサギ」を働くからである。
「アンタじゃないよー」
と言って、妹を呼ぼうとまた吠える。
隣の部屋で、吠えていたら、私の猫はその声の正体が気になって仕方がない。
誰が筆頭に知恵を働かせたのか知らんけど、まんまと居間に侵入する事が出来たようだ。
すっかり忘れていたが、猫は柵を越え、ドアも開けられる動物。
「あれ?うちの娘達がいない…」
気になる物は、確かめる。
そういう衝動に掻き立てられたのだろう。
タロウのいる部屋に駆けつけたら、震えるタロウを囲むようにケージの周りにいる3匹の猫。
いつもはビビりの3匹のくせに…。
それはまるで獲物を捉えて物色する、虎のようであった。
「そっか、虎って「ネコ科」の生き物だもんね」
と呑気な事言ったら、妹にこっぴどく怒られた。
私は一目散で猫とその場をずらかったのである。