私は商売柄、人の顔を覚えるのが得意である。

というか、覚えなくてはならない業種の為、会社に入りたての頃は、それぞれに「あだ名」をつけていた。

「あだ名」は、似ている誰かの名前ではなく、会話の一部を抜粋して付ける作戦である。

お寺巡りが好きな方は「寺さん」。

福山雅治が好きな方は「福山」。

ハマーに乗っている人は「ハマー」。

コーギーを飼っている人は「コーギー」。

至ってシンプルな覚え方なのだが、顔は覚えてても名前が出てこない事が多い中、会話の内容を紐付けでおくと、いとも簡単に名前も出でくるのだ。

「俺も顔を覚えるのが得意」

と夫が言う。

私の会社の同僚に、ほぼほぼあだ名を付けている。

綺麗どころが多いと巷で囁かれている当社の社員に対し、「吉田秀彦」「白鳥翔(プロ雀士)」「バカボン」…。

酷いわー!

そしてついに「アリクイ」と、人間でない物にまで例えている。

更に、それを当人言っている。

うちの夫は、会社の社員の女子会になぜか顔を出したがり、いっつも私にくっついてくる。

バカボンや、アリクイに似ていると言ったら、反撃を食らっていた。

「茂木博士」!

「元都知事の猪瀬!」

クククク。

似ている似ている。

側で1人笑っていたら、矛先が私に向いた。

「ドラミ」

20歳ぐらいの時に、会社の同僚にそう呼ばれていた事や、「北勝海」(現八角理事長)と呼ばれていた過去をバラされた。

その場の笑い者にされた私。

私だって、綺麗な人に例えられた事、あるもん。

「松たか子」

「雛形あきこ」

「高島礼子」

その票は各1票づつのみであるが…。

殴られるのを覚悟で言ってみたのである。