私の子供の頃、服のつぎはぎは、まだ許される時代だった。
靴下は当然の事、その頃の子供制服と言えるジャージは、体育館でスライディングする為、擦り切れて、結果穴が開く。
その擦り切れた所を引っ張ったり、いじったりするので、穴がどんどん広がっていく。
まるでストッキングの伝線のように、長い傷が、出来上がる。
それをせめてアップリケつけてほしいのに、そんな発想は、まるでなし。母は、傷を縫うように、直すのだ。まるでジャージのフランケンシュタインである。
そんな節約を頑張る、母、ヒデコさん。
近所のスーパーのチラシと睨めっこ。なんなら、⭕️とか、印をつけていたり。
私は実家にいた時は、よく母親の買い物に付き合った。車もないから、まあ荷物持ちなんだけど。
買い物かごに入れる食材は、皆、良い物ばかり。
食材にこだわる、といえば聞こえは良いが、結局食べたい物を買っている。
「特売品は全然買っていませんけど」
とも言いたいし、
「家を出る前にチラシに印をつけた物はどうした」
と突っ込んでやりたい。
何事もなくレジで会計し、
「何でも物は高いわね」
とため息をつく。
そんな母はテレビショッピングを良く見ている。あれは確かに「欲しい」と思わせる何かがある。
とある日の午後のテレビを見てて、
「あらっ!この真珠、いいわね!安い!」
…安くないよ10万円じゃん。
分割払いにして、手数料無料などと、手の届く所に近づいてきたので、まんまと罠にはまりそう。
「これは、お葬式にいいわね!」
お葬式?
お葬式につけて行ったら、なかなか映えそうだけど、お葬式にしか使わないのなら、いらないのでは。
「お義姉さんも、素敵なのしていたのよ。いいわーと思って」
母が崇拝する、私の叔母と同じようにしたいらしい。女子会でお披露目するアクセサリーじゃあるまいし…。
お葬式でのシーンを思い浮かべて、ワクワクしている。
まさか…次のお葬式を心待ちにしているのでは?
彼女なら、ありうる、と疑っているのである。