元ボス猫の人生(後半) | ねこなでライフ keyT:R

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猫と幸せな暮らしを

blog Number 018

元ボス猫クロ

 

 

  2019年新年 外猫たちの生活

 

年を越えて寒い冬を寄り添って過ごす3匹の外猫たち。
私たちの世話も1年半を越え、最初から人懐こかったのはクロだったが、最近ではりゅう君も少しずつ歩み寄って来るようになっていた。ご飯の時間には、玄関先で見上げるようにして待つようになる。

 

 

ぽかぽかと温かい日には、我が家の玄関先に設置しているゴミ箱の上に。ちょうど陽があたり、適度な高さがあるので落ち着くのだろう。



 

そして寒い夜は、相変わらず3匹ですし詰め状態の別棟ハウス。
ほとんど身動きが取れないと思うのだが、メイはこれが大好きなようです。ずっと一緒に居たいんだろうなあ・・・・

 

 

 

  2019年春 いつまでもこの景色を

 

 

桜咲く季節、玄関の冬を乗り越えて、今年も外猫たちは自由闊歩。この季節をこの子たちは後何回迎える事が出来るのだろうか?そう思いながらも、りゅう君とメイは日に日に体躯がでっぷりして来ていた。そりゃ、あれだけ食べれば太るわな。
しかし、この頃から気になり出したのは、クロの様子。何か口からダラ~っと垂れているものが・・・それは自分の唾液でした。一度口の中を見てみたのですが、歯がかなりボロボロになっている。おそらく、口内に菌が増殖してしまっているのだろう。口を拭いてやり、しばらく様子を見る事にする。

 

 

  2019年夏 最後の予兆

 

暑い夏が来ました。我が家のエントランスでくつろぐ外猫たちのために、陽射しを少しでも緩和させてあげようと、ホームセンターでオーニングカーテンを買って来て、家の前に設置しました。これでかなりの日陰が出来て、ベンチには風が吹き抜けて心地良い環境となりました。其処も人気のスポットです。

 

 

 

この頃、クロの体がやたら汚れていて、毛並みもかなり悪くなっていました。ご飯を食べる時にも時々しかめっ面をして食べにくそうにしています。以前、みぃの時も同じような経験をした事があるので、不安が過ります。
クロはそれからしばらくは、食べる時にはガツガツ食べますが、食べないとなったらすっと何処かへ行ってしまいます。これはさすがに病院に一度連れて行った方が良いかもと思い出しましたが、その日からクロは徐々に我が家に近付く事がほとんど無くなって来ていました。何かを察知していたのかも知れません・・・・

 

 

  2019年秋 クロ、虹の橋を渡る

 

 

 

 

 

秋の空気に包まれる季節。いよいよクロの状態が良くないと判断し、近所で猫をたくさん世話している、我が家では猫おばさんと呼んでいる世話人に相談し、一緒にクロを確保して病院に連れて行こうと言う話をしていました。しかし、その頃からクロはまったく私たちの前に姿を現さなくなっていました。

10月19日夕刻・・・
クロが姿を見せました。これはチャンスなので、病院に連れて行けると思い、クロを見ると、少し距離を置いて私たちの方をじっと見つめています。そして小さな声で、非常にか細い声で鳴いて来ました。何かを訴えているのか、何かを伝えようとしているのか、口からよだれを垂らしながら、汚れ切った体でこちらをじっと見つめています。私たちは動く事が出来ませんでした。後で思ったのですが、クロはもう、自分の最後を迎えるために、私たちに最後の挨拶をして、去って行こうとしていたのではないだろうか、と。そのままクロはその場を立ち去り、それから姿を見せる事がありませんでした・・・・

クロが姿を見せなくなって十数日、その日私は仕事でした。クロが突然、奥さんの目の間に現れたのです。その日は近所で高齢者の寄り集まりがあり、最初に見つけたのは老婦人でした。廃屋になっていた家の軒下から、一匹の白黒猫が出て来たかと思うと、フラフラと、本当に力無い歩き方でゆっくりと、ゆっくりと空き地を歩いているのを。
そして奥さんがそれに気付いて出て来た時には、クロは奥さんの姿を見た時に、また小さな小さな声で一鳴きしました。そしてその後、ばったりと横倒れになり、そのまま動かなくなってしまいました。
集まっていたご老人たちもざわめきます。それはそうでしょう、突然目の前に瘦せ細った力の無い猫が現れ、そして目の前で倒れたのですから。そうそう目にする光景ではないと思います。
奥さんはすぐにクロに駆け寄り、抱き上げると一旦家まで連れて来て、頼りになる猫おばさんに連絡、すぐに猫おばさんが病院に搬送してくれました。

猫おばさんによって病院に運ばれたクロは、獣医師の救急処置を受けましたが、見る見る間に弱って行き、息も絶え絶えとなります。
私が仕事を終えて家に向かっている途中、LINEで奥さんからメッセージが届きました。さっき、クロが息を引き取ったと。
奥さんは家に戻っていて、病院の猫おばさんから電話が入ったらしいのですが、その時にはもう臨終寸前のようでした。電話口をクロの耳元に当てて、奥さんが「クロ、クロ、お母さんだよ」と声を掛けてやると、それまでぐったりしていたクロが尻尾をか弱い動きで振ったそうです。奥さんの声を聴いて何かを感じたのでしょう。・・・そしてその数分後、クロは天に召されました。

私は帰宅すると、クロの亡骸を連れ帰ってくれた猫おばさんの元に。クロはお風呂に入れて貰い、それまで汚れ切っていた体も綺麗になっていました。その表情は実に穏やかなものでした。亡くなる前の奥さんの声が聴けたことと、亡くなった後にでもお風呂で綺麗にして貰えた事が気持ち良かったのだと思います。
しばらくその亡骸を見つめていましたが、生きていた時のクロの姿が思い出されて来て、涙がこぼれました。
ああ、私たちはまたひとつの命を救ってあげる事が出来なかった。何て無力なんだろう。
しかし、お互いに会えた事、一緒に過ごした時間、それがクロにとっても、私たちにとってもかけがえのない時間だったのだと思いたい。虹の橋を渡ったクロが、今でも最後に生きた時間を楽しかったと思って貰える事が私たちの願いです。
そして、残るりゅう君、メイの二匹は、少しでも長く暮らして行けるようにして行けたらと思います。

辛い事も、楽しい事も、思い出も、すべてを胸に、元ボス猫クロは虹の橋を渡って行きました・・・・

 

クロの最後の写真