--------------------------------------------------------------
((参考))
塩野崎氏(2016)の主張
『やんばる地域の人口は約10000人で2004年から2010年の6年間で収容されたノネコ・ノラネコは750頭である。一方奄美大島の人口はやんばる地域の6倍以上の約63000人で、推定されるノネコの最大生息数は1200頭にものぼる。希少種生息地の周囲に生息するノラネコを含めると、奄美大島で捕獲しなければならないイエネコの数は数千頭になると推測される。またやんばる地域は沖縄県、小笠原諸島は東京都という大きな自治体に属しており、新しい飼い主探しに協力してくれる獣医師や動物愛護団体も少なくなく、飼い主候補となる人口も十分にいる。一方、奄美大島は、島内の獣医師の数も少なく動物愛護団体も存在しない。
(中略)
やんばる地域においてさえも、全ての捕獲ネコに飼い主を見つけることは困難で、常に100頭前後のイエネコをシェルターで管理している状況である(長嶺2011)。このことから奄美大島で、ノネコ収容シェルターを設置し、新しい飼い主を見つけるという方法をとったとしても、すぐに運営破綻の道を歩むことは容易に想定できる。
現在、ノネコ捕獲が停止しているのは、捕獲して殺処分が出来ないこと、また収容能力がないことが原因である。しかし、捕獲の停止は、希少種を保護する立場でもある環境省が本来取るべき手段ではない。同じ鹿児島県に属し、奄美大島と似た生態系を持つ徳之島でもノネコによる希少哺乳類の捕食が大きな問題であることが2014年の食性調査で確認された。徳之島では環境省主導のもと、迅速にノネコ捕獲が実施され、現在までに60頭以上が捕獲され、うち約20頭が新しい飼い主のもとに引き取られている(渡邊2015)』
---------------------------------------------------------------------------
奄美大島「ノネコ管理計画」見直しを求める院内集会
集会アピール
平成30年度から環境省は、島に生息する希少種を保護し、奄美大島の生態系を保全する目的を謳った「ノネコ管理計画」をスタートさせました。同管理計画では、捕獲したノネコの譲渡先が見つからない場合、殺処分も辞さず迅速な駆除を行うべきことを明言しています。この計画は、同省の2003年度時点のアマミノクロウサギ推定生息数2000〜4800頭を前提としていますが、環境省は2015年度時点で15000〜39000頭まで回復していることを示すデータを得ていたことがわかっています。さらに、これまでのノネコ捕獲実績が目標の6分の1程度であることから見て、ノネコ生息数も数倍程度は過大に評価されていることが推測されます。つまり、ノネコが生態系に甚大な被害を与えているという主張、ノネコの駆除を迅速に進めるためには殺処分が必要であるという主張の根拠はともに失われたと考えざるをえません。このように効果のほどが疑われる計画に、10年間で推定5億円の税金が投入されることは国民として看過できるものではありません。希少種の保護のための別な方法を検討し、そちらにこれらの税金を振り向けるべきです。
安倍晋三首相は即位後朝見の儀において、令和時代は「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ時代」であると述べられました。美しき日本の国振りのなかには、動物愛護管理法の保護法益である「動物を愛護する気風という良俗」が含まれていることは疑いの余地がありません。全国自治体で犬猫の殺処分ゼロが謳われるようになった現在、奄美大島で愛護動物「ねこ」の殺処分を前提とした「ノネコ管理計画」が進められることは、この観点から見ても全く道理に合わないのです。
こうして、この集会に集まった私たちは宣言し、環境省の皆さんに呼びかけます。「ノネコ管理計画」を見直してください。きちんと検証された推定生息数に基づき、アマミノクロウサギをはじめとする希少種保護に真に有効な対策を考えていきましょう。捕獲された猫たちの譲渡先を、時間をかけて探し出し、安易な殺処分に頼らずに済む方途を見出していきましょう。
令和新時代が、この日本の国土に生きる人々にとっても、同じ国土の隣人であるすべての動物たちにとっても平和で幸せな時代になりますように。こう祈念しながら、私たちは謹んでこのアピールを宣言いたしたいと思います。
----------------------------------------------------------