廿日市市HP内、
『宮島地域のシカ対策』より、
以上をまとめたものを以下に示す。
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現在450〜500頭ほどの鹿が生息しているそうです(宮島地域シカ保護管理ガイドラインより
/但し、宮島地域シカ保護管理計画(第2期)によると、「島の北東部に500頭以上が集中して生息」とあります:調査の結果推定数に比して多かったことがわかったと書かれています)。
その内、200頭ほど(宮島地域シカ保護管理ガイドラインによる)が市街地(人間の生活環境)におり、以前は住民や観光客からの給餌がされていました。
一時期、激減した過去があり、島の住民によって給餌し、回復した経緯があるそうです。
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資料1:宮島地域シカ保護管理計画(第2期)_p.1現在、宮島の面積に比して鹿の頭数が増えすぎてしまったため、様々な問題(※)が浮上しており、
これを解決し、人間と鹿との共生を図る目的で
「餌やり禁止の徹底(マイクロチップによる継続調査中)」と「ゴミの撤去」が行われています。
※ゴミの散乱、農作物への被害、糞尿、自然植生・貴重植物への食害があると言われている。
また、給餌の影響により、鹿の胃から異物(ビニール類など)が出ており鹿への健康被害、
過度の人馴れによる交通事故が起こっていると言われている。
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資料2:宮島地域シカ保護管理計画(第2期)_p.6〜7
→資料2によると、餌やり禁止の他にも、
計画的給餌・シバ草地の設置・避妊去勢が検討されており、
これをもって合意・対策開始となったようですが、
これらは、自然に介入すべきではないとする理由から最終的に実施しない方針となったようです(資料3)。
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資料3:宮島地域シカ保護管理計画(第2期) 概要版_p.1
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----------------------------------------------------------資料4:宮島地域シカ保護管理計画(第2期)_p.8
→課題に対する対策として餌やり禁止の徹底があげられている。
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【餌やり禁止の徹底で目指したいとする効果】
・市街地から森林・山中へ生活の場を移させる。
・栄養状態がよいと繁殖力が強くなるとされていることから、繁殖力を落とすために栄養失調状態を作ろうとしている。
・「餓死」させようとして餌やり禁止を掲げているのではないが、県外から給餌に来られるため悪影響が出かねない(餌やり禁止の効果が最大限発揮できない)。
・また、「給餌禁止により餓死している」という「事実は確認されておらず」「誤った情報である」としている。
・現在、宮島の鹿は(栄養状態が悪いため)小型化してきており3〜4歳で妊娠する傾向にある。
・但し、繁殖力は比較的強いため、給餌がされることで更に増加することが懸念される。なので餌やり禁止徹底が重要である。
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人間との棲み分け、生活圏をお互いに侵さない前提に立ち、
野生動物への餌やりは禁止されるべきだと思う。
例えば、北海道で観光客が野生の熊にソーセージを与えたことで、
人間から美味しいものをもらえると学習した熊が小学校にまで現れるようになってしまった。
人間の生活圏に侵入し始めた熊が人間を襲うリスクを鑑みて、射殺された。
明らかな人災だ。
また、野生のキツネが人間の食べ物を食べ、皮膚がボロボロになるなどの事例も見聞きしたことがある。
野生動物と人間は同じ空間で共生することが非常に難しい。
だから、お互いの生活圏(=安全に生きていける場所)を侵してはならないのだと私は思っている。
それであるから、野生動物への餌やりは禁止されるべきだし、観光で訪れてほいほいと餌をやってしまう無責任な行動は批判されるべきだと考える。
一方、宮島の鹿や奈良の鹿はどうか。
山中で生活している鹿もいるが、一部の人里で生活するようになった鹿にとっては安全な生活圏が市街地なのだ。
夜には山中へ戻るのが大半だという記述もあったが、昼間の生活圏は市街地だという事実は変わらない。
それまで、そこでごはんをもらい命を繋いできたのだ。
人間は野生の中に本来存在するものではないが、野生動物が餌場として、他の植生地と同じように人間から餌をもらえる場所を認識しているのならば、
野生の棲家を奪うことと変わらないことをしているように思う。
昨日まで受けていたケアを、急に受けられなくなると、「なんで?どうして?」と動揺してしまうものなのではないかと思う。
鹿に限らず。同じことをされたら、私なら傷つく。
餓死している事実はないと明言しているが、
一方でビニール類を食べて亡くなっている鹿については言及している。
これを人から餌をもらう代償のように書いているが、お腹が空いたからゴミを食べてしまったものと思う。空腹じゃなければわざわざ異物を食べたりしない。
これを餓死と呼ばないところに本件のレトリックが滲み出ている。
餌やりを禁止したことで栄養状態が悪いから繁殖が抑えられているというのは、
餌やり禁止によって、栄養が足りない状況が作られた=人間の与える餌が鹿の栄養を守っていたと言える。もちろん、鹿が多すぎるために島全体の植物が足りないからであるということは事実としてある。だが、同時に人間の与える餌ありきで成り立つ生態であったとも言える。急にその栄養源がなくなるのは、例えば森林破壊などで棲家を奪うような状況に類似する。
また、繁殖抑制のために栄養失調状態を作り出し、餌やり禁止を徹底、更に植物も足りない、となれば、結果として餓死を誘引しているにほかならない。
また、栄養状態が悪くても一定の繁殖力を保っているのは、
生物の生きる目的である「種の保存」によるものと考えられる。
自然界において飢餓状態が続くと種は絶えていくが、それを少しでも存続させようとして繁殖力が上がるとされている。
栄養状態を悪くするという操作(書いてきたようにこれまでの生活スタイルを奪うのは明らかな操作である)をするならば、
自然界における操作をすべきではないから避妊去勢手術はしないというのは矛盾している。
鹿の増加による問題を緊急性が高いとしながら、避妊去勢するほどの緊急性がないとするのも矛盾しているかと思われる。
サウスダコタ州において、野良雄犬に対する塩化カルシウムの精巣投与が繁殖防止に役立っているという。→★
マイクロチップを埋め込んだり角を切ったりするために捕獲を実施しているのであれば、ついでに塩化カルシウム投与を実施すれば、直接的な効果を上げられるものと思われる。
人間の手からごはんをもらっていた鹿たちのお腹を空かせている姿に心を痛める人もたくさんいると思う。
現に、調査結果には「栄養状態が悪い」と書いてある。
市街地から森林へ生活の場を移させる目的にしても、
島の貴重植物への食害を問題点として挙げており、
面積当たりの適正頭数をオーバーしていると記述している点、
また、野生における自然淘汰を繰り返し述べている点で、
「直接的な駆除を行えない」宮島において、
餓死を促していることは明白である。
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私は宮島に憧れるだけで訪れたことも、ましてや現地調査をしたこともないため、
廿日市市による現地調査結果に基づいての意見を述べさせていただきました。