もうニ度とご免だ という出来事については、
25年の間でいくつか思い当たるふしがある。
悪いことに、2度と・・・と思っていても、
2度どころか3度繰り返したりして、
その都度「もう2度と・・・」と再び思うのが常であった。
例えばそれは渋谷のど真ん中で
「ぎゅべっ!」などという謎の叫びをあげながら
派手に転んだことだったり、
茹でられすぎて水死体のようになったブロッコリーを
うっかり口に入れてしまったことだったりする。
中でも多くの人が経験あるだろうことは、
二日酔いの苦しみだろうか。
こんなに辛いならもうニ度とお酒なんて飲むまいと思っても、
同じことを何回繰り返したか知れない。
しかし二日酔いは大抵、
出すもの出して薬を飲んで寝ていれば、よければ半日で直る。
私も東京にいたころは、昼頃まで二日酔いで苦しんで、
もう2度と・・・と思ったにもかかわらずその日の夜には
もう飲みに出かけたりしていた。
終わりが見える苦しみは、
ある意味「不幸中の幸い」である。
それなりに苦しんだとしても
それはゴールに向かってる証拠なのだから。
数週間前に私が体験したのは、終わりが見えない、むしろ、
終わるのは死ぬときなのではないかと思うほどの
今まで体験したことのないような、生き地獄だった。
(生き地獄・・・・いや、生きながらの処刑??
ううむ・・・いや、処刑されてるのにまだ死ねていない感じ??)
―以下、覚書―
日曜日。
ぐっすり寝たのにどこか体がだるい。
午後には発熱し、きっとまた風邪をひいたのだろうと、
解熱作用のある薬を飲んでおとなしくしていたのだが、
ちっともよくならない。
辛くなって東京の実家にメールを送り、
その後スカイプで話すがそれをきっかけに
もれなくホームシックにかかる。
食欲はないが何か胃に入れなくてはと思い、
お茶づけを一口食べては15分休み、の繰り返しで何とか完食。
最後にはぶよっぶよのお茶漬けに。
お茶漬けをおいしく食べられなかったことに対してなぜかしくしくと泣く。
その夜中。さらに発熱。
汗はかけども熱は一向にさがらず、
ものすごい吐き気で眠ることができない。
月曜日。
仕事には行かないといけないと思い、這うように出勤。
しかし結局授業をすることができずに、
他の先生に代講を頼む。
たまごやき号に乗ってしくしく帰宅。
(お茶漬けの件以来、涙腺がイカれた模様。)
午後、同僚に付き添われて病院へ。
漫画に出てくるようないいかげんな医者にあたる。
どっしりとした佇まいに
金ぴかの時計をはめているその医者の
もったりとした口から流暢な英語で、
「タ○サート大との日本語学科の先生なの?
ぼくも君に日本語教えてもらいたいなあ~」
という、元気ならば舌打ちを浴びせていただろう言葉を頂戴する。
それを聞いていた同僚は思わず、
「くっ・・・このおやじ・・・・」とつぶやく。
その後、血液検査。
検査結果でなにか異常が見当たったら電話してくれるとのこと。
帰り支度をしていたら、ナースが走ってきて、
「検査結果がもう出たよ」とのこと。
でも、「いや、結果が出たってことは聞いたけど、内容はわからないわ~☆」だって。
はあ、そうですか。わざわざどうも。
病院でもらった薬はなんだか盛りだくさんで、
しかも一粒一粒がおっきい。
日本だったら座薬と間違えてお尻に入れてしまいそうな位のサイズ。
解熱剤のおかげで熱はさがったものの、
その頃からさらにひどい吐き気に襲われる。
病院から「血液検査の結果、異常が見られた」との連絡。
なにが異常だったのかと問えば、
「さあ。僕にはわかんないけど。なにかの数値が高いみたいよ。
でも、よくなりそうだったら別にだいじょうぶじゃない?」
だって。ちーん。
寛容な私もさずがに「ばっかじゃなかろうか。」と思った。
なんだろう、この脱力感&虚無感。
ベッドに横になるとさらにひどくなるので寝られず。
でも眠いので、ベッドに座って寝ることにする。
電気がついているとちかちかして気持ちがわるくなるので、
部屋をすっかり暗くして、ベッドに座って寝る女。
ホラーそのものである。
まるでお化け屋敷にあるフェイクの人形のよう。
人間か、人形か。動くのか、動かないのか、前を通ってみないとわからない。
火曜日。
休みをもらっていちにち家にいた。
しかしまったくよくならない。
再び座って寝るホラーな夜。エレファントマンのごとし。
水曜日。
少しよくなったので職場復帰。
薬を飲むと具合が悪くなることに気が付き、
飲まないでおいたところ、教壇に立てるまでに復活。
なんじゃこりゃ。
薬があわなかったということもあるのか。
そんなこんなで、薬を飲まなくなったとたん、
めきめきと体調も戻り、
木曜日の昼にはちゃんとした食事をとることができた。
ようやく、ゴールにたどり着いたのだ。
座って寝ていた頃、
人形のように固まって横にも縦にも体を揺らせず、
目はかすんでくるし手足は冷たくなってくるし、
このまま空から天使が来て、
フランダースの犬よろしく空へと連れていかれるのでは・・・と思った。
そうしたらパトラッシュの役は、わんぶろうになるのだろうか。
「わんぶろう、ぼく、もう疲れたよ」と言った方がよかったのか。
しかしあいにく私は西洋美術にはあまり興味がなかった。
わんぶろうはのんきなアロハシャツを着ていた。
本当に今回のようなことは、
ニ 度 と ご 免 こ う む る !
これなら毎日二日酔いで苦しんだ方がましだ。
今こうして、
ごはんをしっかり食べれて、友人とビールを飲んで笑って、
横になって眠れることを本当に幸せなことのように思う。
誰かが言った。
「幸せな毎日というのは、健康について改めて考えなくてもいい日々のことだ。」
先人は言った。
「なんでもないようなことが幸せだったと思う。」
あ、そりゃ虎舞竜だった。
土曜日から、タイでは火曜日まで連休で、
思いっきりバンコクであそんだ。
それについてはまた今度。
~おまけ~
職場復帰の日に使ったマグカップ。
これでインスタントみそ汁を飲んだ。ずるり。



