人生で初めて、親と妹と婆ちゃん以外からチョコを貰ったこの日を、忘れてはならない。

郵送されてきて、手渡しというわけにはいかなかったけれど、そんなのは全然気にならない。

・・まぁ、文章で書いてはみたけど、実際そこまで嬉しかったかといわれると少し違う。

 

夢に見ていた。この日が来るのを。

自分のことを好きでいてくれる人が居て、「俺の為だけに」あるいは「俺のことを想って」、

俺にチョコをくれる人がいたら、それはどんなに嬉しいことかと。

家族からは、チロルチョコを申し訳程度に貰うくらいだったから、なお更そういう心の込もった贈り物に

憧れを抱いていた。

 

しかし、

21年間生きてきて、初めてもらった手作りのチョコを目の前にして俺がどうしたかといえば、

感激で涙するわけでなく、声をあげて喜ぶでもなく、

ただただ、素直に嬉しくてジッとしていただけだった。

そして、それと同時に、夢想していたことと現実とのギャップに、少し戸惑ってもいた。

 

女の子から貰うチョコ、それは俺にとって憧れであり、手の届かないものだった。

なのに、実際に手に入ってしまうと、こんなにあっけなく、普通なら手に入るはずなんだと・・

今更ながら、自分の人生の薄っぺらさに気付いて、しばし呆然とした。

 

・・まぁ、なんだかんだ言っても、嬉しいことに変わりはないけれど。

今年もらえなかったら、また来年、再来年、その先と・・ずっと同じ夢を、このバレンタインデーが近づいた時に

また見ていったことだろう。

 

いい体験が出来た。

 

それに、彼女の気持ちが少しは込められてあるであろうこのチョコを、

食べている今のこの心境・・うまく説明出来ないくらいに、幸せなのだろうし。