シアターX提携公演 演劇企画イロトリドリノハナvol.3

『明日ー1945年8月8日・長崎』

 

舞台自体は、9月6日に終演いたしましたが、今回は、コロナ感染の状況も鑑み、終わってからもしばらくは予断の許さない日々が続きました。

そして2週間がたった今現在、キャストや関係者、またお客様からも体調不良の報告はありません。

ひとまず安堵しています。

みなさまのご協力に、心から感謝いたします。

どうもありがとうございましたm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m

 

荷物の片づけや衣装の返却作業、公演DVDの編集作業などで、まだまだ慌ただしい日を送っています。

お客様への御礼も遅れており、本当にすみません。

 

正直、まだ芝居の余韻がなんだか抜けなくて…(笑)

このような厳しい状況の中で公演をすることは、いつもの何倍も神経をすり減らす毎日でしたが、その中で得たものは、何物にも代えがたかったように思います。

コロナ禍によって、一時停滞を余儀なくされた演劇界も、ここにきて少しずつ息を吹き返しつつあります。

もちろん100%安全ということはありませんが、感染対策に十分注意し、万全の備えをすれば、お客様に安心してみていただけるはず。

そんな舞台を創りたいと、心に決め、覚悟をもって、この半年間挑んできました。

不安を抱える今だからこそ、「心沸き立つような瞬間」は必要なのだと、私は考えます。

人によってはそれがスポーツであったり、音楽であったり、お芝居であったり…さまざまだと思いますが、生きる喜びを心から味わう、その幸せな瞬間を、私は大切にしていきたい。

それこそがまさに「人生=Life」だと思うからです。

 

この作品は、太平洋戦争末期という極限状態でも、助け合い愛し合い、時にはいがみ合いながらも、幸せな「明日」を夢みて精一杯生きる人々の姿が描かれています。

芝居をご覧になった方の中には、彼らの姿に今を重ねた方もいらしたのではないでしょうか。

彼らの「明日」は一瞬にして奪われてしまいます。

絶対にそのようなことは起こってはならない、と思います。

そのためにも、私はこの作品をずっと続けていきたい!

また機会を見て、再演したいと思っています。

 

さて、今回も様々なご意見、ご感想をお寄せいただきました。

その中には「原作との違い」について書かれていたものもありました。

脚色をほめてくださった方もあれば、違和感を抱かれた方もいらしたことと思います。

私は、この「明日」を脚色するにあたり、舞台という制約のために、登場人物たちが抱えるエピソードを再構築をしております。

しかし、表層に現れる部分は変わっていても、井上さんの持つ世界観と本質を、私なりに何よりも大切にして物語を紡いでいます。

また、小説「明日」の解説で秋山駿さんが、井上さんの小説家としての個性的なスタイルについて熱く語っています。

私はその言葉一つ一つに深く共感し、感銘を受け、その影響を受けております。

そのすべてをここで語ることはできませんが、

次に再演するときは、上演に合わせて、「井上さんの原作を読む会」といったものも開催し、参加していただける方がいらっしゃれば、皆様と熱く語り合いたいなと思ったりしています。

 

また、「安子」という役に対する質問もいくつか受けました。

「川辺安子」は、「戦死した川辺中尉の妻」であり、原作中では、ヒロイン、ヤエの叔父の部下の「石井青年」が駆け落ちした相手の女性です。

(ちなみに他の井上作品にも、なぜか、この川辺中尉の美しい未亡人は登場するので、井上さんにとって特別な意味のある登場人物なのかもしれません)

 

当時日本では、「第一移動証明書」を持たずに住む場所を離れることは、許されないことでした。

つまり、駆落ちの行く末は、特高につかまるか、心中か、生き残ってもまともな道はないのです。

そこから想を得て、石原が女を買いに行くシーンに「安子」のような女をおいてみました。

そこにおいたときには、もっと違うシーンを想定していたはずなのに、いざ書き始めてみると、彼女がいつのまにか勝手にしゃべり始めてしまい、気が付いたらこんな女が出来上がってしまいました。

書いた私自身も、この女が何者なのか、いまだによくわからないのです。

(私は、こういうことがよくあります。ほかの物書きさんも、恐らくそういう経験をされているものと思います…。)

まさか、石原と彼女がこのような最期を遂げるとは思ってもみなかったのですが、書き上げて、もう一度、原作を読みかえしてみると、暗闇からふと現れて、石原を誘っていく怪しげな女は、この女しかいないと思えてきます。

(原作では女を買いに来た石原は、中に入りあぐねているところを、突然目の前にあらわれた不思議な女に声をかけられて、連れられて行くのです)

また、原作には安子以外にも村社選手の妻など、夫を失い、心を病んだ女たちが出てきます。

「安子」とは、この物語の中でどういう存在なのか。

今回初演の時よりは、すこうし安子が認識できたような気がしますので、次の上演時には、もっとはっきりしたものを、皆様にお届けできるのではないかと思います。

 

…というわけで、なんだかつらつらと語ってしまいました。

長くなってしまい、すみません💦

まだまだ、しゃべりたいことだらけですが、この辺で終わらせていただきます。

 

今回公演をやるにあたり、本当にたくさんの方にご助力いただき、言いつくせないほど感謝しております。

出演者、スタッフの皆様、

情熱ばかりで穴だらけの私を支えてくださり、本当に本当にありがとうございましたm(_ _)m

至らない中でも自分なりに満足のいく公演ができたのは、なにより皆さんのお力があったからです。

この状況の中でお越しし頂いたお客様(何度も足を運んでく出さった方も大勢いらっしゃいました)、

行くことはできないけど応援しているとエールをくださった皆様、イロハナ応援チケットを買ってくださった皆様、

誠にありがとうございました!!!

また、事情があって、お知らせを怠ってしまった方々には、大変失礼いたしました。

 

終わってみれば、私がどれほど演劇をが好きだったのかを、思い知ったという公演でもありました。

 

今後は、自分自身が成長するとともに、もっと余裕を持てるシステムを構築し、より良い作品を作ることができるよう、一所懸命頑張ります。

みなさま、これからも、何とぞ宜しくお願いいたします。