彼と出会う半年ほど前

懐かしい人から

一通のメッセージが届いた



Rさん

彼は私よりも大分年上の男性

通称“おっちゃん"



20代のまだ若くて世間知らずだった当時

私は毎晩エッチなチャットルームで

大勢でおしゃべりすることにハマっていた

そこで出会った人だ



当時はよく夜中まで電話で話し込み

どんな時も「うんうん」と言いながら

何時間でも話を聞いてくれる

私の良き理解者、相談相手だった



そんな彼からの久しぶりのメッセージ



「紫陽花ちゃん、久しぶりぃー

 元気でやってる? 

 おっちゃんは実は今、終活中です

 末期癌やねん

 俺が死んだらカミさんに

 喪中のハガキ送ってもらうから

 良かったら住所とか教えてや」

 


……何ですって???



一気に涙が溢れ出た



やだよそんなの

悲しいよおっちゃん

おっちゃんがいなくなっちゃうなんて

そんなことになってたなんて

全然知らなかったよ…



「いやまだ死んどらんがなww

 勝手に殺すな〜」



根っからの関西人のおっちゃん

サバサバとしたもんだった

死んだ後の葬儀やお墓のことなども

もう全て自分で段取りしていた

それでも

治療はしんどそうだった



そうしてまたコンスタントに

やりとりをするようになり

彼と出会った頃

私はおっちゃんに

メッセージを送った



「好きな人ができてしまったの

 どうしよう」



おっちゃんは

「修羅場になることしか

 想像つかんよ……

 やめとき

 俺は紫陽花ちゃんには不幸に

 なって欲しくないからなぁ


 頑張れ、紫陽花ちゃん

 おっちゃんも、

 治療、頑張るから」



そう言ってくれたおっちゃん



彼と関係を持ってしまった時

おっちゃんにメッセージを送った



「ごめん、おっちゃん

 結局、彼と

 セックスしちゃった…

 でも、一度だけって

 そう約束して、したの」



おっちゃんからの返信は

「そうかぁ〜」

という一言だけだった



もう体調もかなり悪かったのだろう

そんな中で返してくれた



それからしばらくして

気がついた時にはもう

おっちゃんのアカウントは

削除されていた



そしてその年の冬

奥様からの知らせが届いた



ごめん、おっちゃん

紫陽花は、弱過ぎるから

おっちゃんが私のためにと

してくれた約束

守れなかったよ……



きっと天国で

「あ〜あ」って思ってるよね



ホントに、ごめん