5-5 | 彼岸の彼方に彼の似姿

彼岸の彼方に彼の似姿

一応、読み方は「〈ひがん〉の〈かなた〉に〈かれ〉の〈にすがた〉」です。意味は知りません。というかありません。語感です。

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あらららら。
校庭の木を燃やし尽くすこともないじゃないか。
「こーーれで広くて戦いやすうううううい。」
ああ。そういうこと。
でも、どうするんだ?
雀の糸は燃やされて、瀧の槍は通じず、アリシアの火はいまいち。
先生の銃も効果は薄く、東屋の……東屋?
「東屋、あの砂に睡眠の効果は?」
「全て、の、攻撃、に、自動付加、されてる。」
「睡眠特化のわ……」
「解析完了魔章は『人魂』位階中級段階初期魔章数一」
いまか!
「白夢。睡眠耐性はわかるか?」
「耐性は低。効果あり。」
「睡眠、特化、の、術、を、行使、する。召喚、を、する、から、はなれ、ていて。
―黒き夜を飾る、星の輝き。熱き砂に染み込む、水のせせらぎ。寒き空に荒ぶ、風の鳴動。汝、深き眠りへと誘う者。今、我が召喚に応じこの場に顕現せよ。砂男(サンドマン)!―」





こんな話を聞いたことはないだろうか?



「砂漠で眠ってはいけないよ。ガラガラヘビがいるからね。

 砂漠で眠ってはいけないよ。砂漠の夜は凍てつくからね。

 砂漠で眠ってはいけないよ。そこには砂男がいるからね。」


即ちサンドマンとは、永久の眠りをもたらす悪魔。


轟。

と音を立てて現れた。いや、顕れた……
「サンドストーム!」
吹き荒ぶ旋風が止むと、そこにいたのは砂男だった。
サンドマンとかそういう意味じゃなくて、正真正銘の「砂」男だった。
確かに人間の姿形をしてはいる。してはいるのだが、その全てが赤茶けた砂で出来ているのだからこれは驚く外ないだろう。
「少年。何の用だ。」
喋った。口の無い砂の塊が。
だがしかし、もう驚かないぜ。

驚かないと言った直後で悪いんだが……
「なんで左腕が、無いんだ?」
「これは、僕、の、魔章、と、関係が、、、、」
「おい、いつまで話してんだ。用が無いなら帰るぞ。」
「そこ、の、人魂君、を、眠らせて。」
「はっ。そのためだけに俺を呼んだか。少年。」
サンドマンは襲撃者に向き直った。
「なぁぁぁぁああんんんだ?この化け物わわわぁぁぁぁぁぁ?」
ズボッ
「なっ」「えっ」「うそ」

埋まった。

襲撃者を殴るような形で手を伸ばしたサンドマンだが、その手が襲撃者を貫通してしまった。
「これは」「まさかの形で」「一件落着」「とか」「まさかぁ」
「いや、それは、無いよ。サンドマン、に、直接的な、殺傷能力、は、無い、から、ね。
これは、眠らせた、だけ。。。」
「俺の砂をぶっ掛ければ寝る。以上だ。」
うとうとし始めてる。
「なんか、眠いぞ。俺、に何をし‥」
はい、作戦成功。なんかあっけなすぎてビックリするぜ。
「あら?火が弱くなってませんこと?」
本当だ。今まであんなに燃え盛っていた火が消え始めている。
「コレは、きっと寝ることによって意識が隔絶されるから、イメージも魔力供給も弱まるのね。」
なるほど、なんか一石二鳥でやったじゃん。
これならとどめをさせる。と思った俺だったが、やはり問題児どもが集まっているこのクラス。そんなに都合よく行くはずも無く。
「ところで、少年、こんなくだらないことでわざわざ呼び出して、俺を誰だと思っている。」
「たかが、悪魔、が、調子、に、乗るな。」
喧嘩勃発。
「少年。俺の左腕を返せ。」
「その、まま、半身、奪って、あげる、よ。」
東屋とサンドマンの回路が活性化した。膨大な魔力がせめぎあっているのが傍から見ても分かる。
「さぁ、少年!返せ!」
「寧ろ、お前、が、寄越せ。前、の、僕、より、強く、なって、いるんだ!!」
風が吹く。
微風が強雨、暴風へと姿を変える頃、決着がついた。
俺等は風と砂粒のせいで目を開けて、立つことさえままならなかった。
「おお。」
みると、サンドマンの左半身がそっくり削られていた。
「ちっ。」
争いに負けたサンドマンは来た時と同じように唐突に帰っていった。
「ところで、東屋君。サンドマンの左腕が無かった理由は、東屋君が魔章として奪ったっていうことなの?」
「大、正、解。」
さぁ、皆。この戦いもそろそろ、御仕舞いにしようか。