2024・2・12  晴れ  ずいぶん暖かい日になりました。

久しぶりに一日ゆっくりしました。

 

昨日、ある集会でお話を頼まれました。

地域にまつわる話を選んでみました。というのも、大勢の人が集まるのですが、

集会所の場所が、昔どのようなところであったのか、ほとんどの人が知っていない

ということで、せっかくだから、やさしいお話で知っていただきたいと思いました。

正史とは違った目で、自分の生活する土地を知ることは、面白い事だと思います。

歩きながら、想像しながら楽しんでいただけたらと思いました。

でも聞いていただく人数が、3階で100人くらい、2階のモニターを見ている人が50人

くらいだと聞いて、わーどうしよう・・・・。内心慌てました。

最初の部分は、解説調で、後半は、昔話を語りで届けてみようと、待っている間に

変えました。

初めて取り組んだ内容なので、間違っている内容があるかもしれないと心配して

います。このことに、詳しく知っている方があれば、教えていただきたいと思って

います。

 

江戸時代から明治時代にかけて、子安地域は、まだ広い道もなく、民家もまばらで、

どこまでも雑木林の続く丘陵地帯でした。

台町から続く丘を今も、人々は子安丘陵と呼んでいます。

丘陵の小高い一角を井手山と呼んでいて、今も小さな公園になっています。

この付近で、木曽の御嶽教の行者が修行していたと言います。法力の高い修験僧で

あったそうです。御嶽教の信仰が盛んとなり祠も建立されて、細い山道を登って参詣

する人の列が朝から晩まで後を絶たないほどだったそうです。ただ、修験僧が亡くな

ったことで、だんだん訪れる人も少なくなっていったそうです。

祠だけは、ずーと守る人がいたそうです。

今は、明神町の子安神社の末社、「御嶽神社」として祀られています。

今井手山と呼ばれていますが、昔は、この山から遠く江戸の火事が見えたので、

江戸山と呼ばれることがあったそうです。

また、この山の中に古井戸があり、井戸山とも呼ばれたが、現代になって井手山に

代わってきたのだというのです。小さな山の名前がくるくる変わるというのも面白い

ことだと思います。

 

今「栃の木通り」と呼んでいる坂道の中腹に、昔は1本の欅の木がそびえて立ってい

たそうです。大人の人が3,4人で抱えるほどの大欅で、その下から清水が滾々と

湧き出でていて、格好の井戸端会議の場となっていたそうです。

昔はこの場所に滝が落ちていて、御嶽教の行者や信者さんたちがこの滝で身を

浄め厳しい修行に明け暮れていたと伝えられています。

この大欅は、ある時、道路が広がることで、突然切り倒されていしまいました。

村の人たちにとっては、突然という感じで、みんな悲しんだそうです。八王子市が

道路の愛称名を公募した時、子安坂上からJR南口に通じる大通りを「けやき坂通り」

と命名してほしいと言ったが、願いは叶わなかったということです。

何百年かの歴史を生き抜き、何世代もの人々の生活に寄り添ってきた大欅の姿を

知る人も少なくなくなってしまいました。

でも、この子安丘陵の大欅のことは覚えておいて欲しいものです。

 

並木に「栃の木」が植えられたことで、「栃の木通り」と、今は呼ばれています。

 

私は、時々南口の栃の木デッキから、この坂道を眺めるのが好きで、大欅の大木

のことは、知りませんが、まるでサンフランシスコのようだと思っています。

この坂道に、路面電車が走っていたら、初めて訪れた美しいサンフランシスコの街

並みの一角に似ていると思っています。

友人に話すと、オーバーだと笑われますが、八王子のサンフランシスコに似た坂道、

だと思いながら歩くのも楽しいことです。

 

何年かのち、大きな公園施設が出来ると、この風景も雰囲気も変わってしまうかも

しれませんが、この地は、昔から聖地であるのかもしれないと思っています。

 

聖地であるかもしれないと思わせる昔話をしてみましょう。

 

神明の泉

とんとんむかし

子安村の南に井出山という形の良い小山があって、神明社が祀られてあったと。

十日市場の治助という百姓家に、7つほどになったばかりのキヌという娘がおったと。

おっかさまが大病を患ってしまってな。幼い娘なのに、山で芝刈りをして銭を稼ごうと

井出山に登ったそうじゃ。

刈り取った柴を、八王子15宿へ行って売り、10文、20文と稼いで、僅かな蓄えをして

、10日に一度はおっかさまの薬代になったと。

そんなある日、山の中で、罠にかかった子猿を見つけたんじじゃ。

「猿は、神明様のお使いじゃ」

と、教えられていたキヌは、すぐに子猿の罠を外し、助けてあげたんじゃ。

子猿は喜んでなあ。キヌの手を引くと、神明巣アの脇の茂みに案内したと。

そこには、きれいな泉がわいておったと。

「この泉、なんだか薬のにおいがする・・・」

キヌは、さっそく泉を汲んで家に帰り、おっかさまに飲んでもらった。

何日も、そんなことがつづいいてなあ。

すると、弱っていたおっか様が、驚くほど元気になったそうじゃ。

それ以来、この神明の泉は、霊泉として里の衆に長く尊ばれたということじゃ。

                                          へえしまい