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正確に言えば、うっかりして最初のドキュメンタリー(?)部分等でウトウトしてしまい、「少し観た!」というのが事実です(汗)。

TBSが『シリーズ・激動の昭和』と題して企画、今回はここ数年ずっと私が個人的に「答え」を考え続けている、東條英機氏を取り上げると秋に知って記事にして以来、ずっと楽しみにしていました。それだけに、前半のドキュメンタリー部分、既に知っている事柄ばかりで特に目新しい内容がなく、またここ数日睡眠が上手く取れていなかったとはいえ、つい寝入ってしまい、結局、ドラマ部分も後半の1時間半くらいしか観ることが出来なかったのは不覚、随分後悔しています…。
それでも、政治・経済界・官僚・教育界・警察etc.とあらゆる分野で日本に“プロ”が急速に少なくなり、中でも最近のマスコミ界、とりわけテレビの凋落に私は目を背けたくなっていたのですが、そんな中にしては、覚悟していたほどの酷さはなく、「思ったりよかった」というのが素直な印象。
ほぼ開戦が決定的となった大本営・政府連絡会議の結論を昭和天皇に上奏(報告)する途中、東條首相が号泣したというエピソード、私は知らなかったのですが(もしかすると、開戦前夜に号泣したと認識しているのは勘違い?)、そこが最も印象深かったです。
勿論、号泣したからといって免罪される訳でもなく、時の政治の最高責任者として、開戦を止められなかった責任は重いのですが、後世のいわば“後出しジャンケン”による「無責任な断罪」で描かれた東條氏ではなかったように私には確認出来た気がしたからかも知れません。

明治維新以来、富国強兵を掲げ欧米列強に追い付こうと全国民を挙げて必死で努力(日露戦争にかけてのこの辺りの涙ぐましい努力は、特に司馬遼太郎さんの小説『坂の上の雲』に見事に描かれています)。やがて日清・日露と勝利、第一次世界大戦でも連合国側として戦勝国に名を連ね、「アジアの三等国」から国際連盟の常任理事国へと、念願の大国入りを果たしました。
一方で当時は、帝国主義全盛の時代。第二次大戦終結時は「正義の味方」振る連合国も、アメリカ(フィリピンなど)・イギリス(インド・ビルマなど)・フランス(ベトナムなど)・オランダ(インドネシアなど)といずれもアジア各国を植民地とし、現地で搾取することで本国や本国民が利益を享受していました。それに比べると、日本が領有した朝鮮半島や台湾などでは、日本から本国と同様に国家資本が投入され、日本支配以前とは比較にならない産業振興と教育普及がなされると共に、戦後それらの地域が発展した要因となったのは事実(だからといって、「今の常識」においては、そうした領有を正当化するつもりはさらさらありませんので、念のため)。
中国東北部のいわゆる満州地域においては、蒋介石の中国国民党政府も正直「領土外」と認識し、一方の日本にとっては、日露戦争の多大な犠牲で獲得した貴重な「生命線」でした。
こうした①連戦連勝不敗の強国日本という、指導者・軍・国民・マスコミ等各層に浸透した国内の自信、②植民地支配が当然視されていた当時の国際情勢と価値観により、戦争に反対することは、その頃の日本では非常に難しい状況。
一方でアメリカ政府の③フィリピン他の太平洋の自国利権を脅かす存在として「オレンジプラン」の存在でも明白なように日本を仮想敵国とし、④参戦に否定的なアメリカ世論を参戦に転換誘導するため口実を必要としていた状況もあって、日本は戦争へと追い詰められていきます。
こうしてみると、「今の常識」から当時を「断罪」するのなら、「事後法」の問題から、極東軍事裁判の正当性自体が問題視されるべきなのに、むしろ軍部、とりわけ東條英機氏のような「分かりやすい」存在に責任の「全て」を転嫁しようとする、もしくはそうした意図に気付かず当然のこととして疑問を抱かないような現在の思想や認識などに、私は恐怖すら覚えてしまいます。
「戦争反対」に疑問の余地はありません。しかし「日本のみが」悪かった、「東條英機はじめ軍人・軍部のみが」悪かった、という考えは、以前何度かお話したように、ヒトラー全面否定と同様の問題点を含有し、歴史から誤りを学ぶ姿勢とは似て非なるもの(詳細は、過去記事をご参照下さい)。
今回のドラマは、こうしたことを改めて感じる機会ともなりました。
(※この段、初めてご訪問下さる方々のために25日朝加筆)

しかし、野村萬斎さんの昭和天皇というのはいい配役だったなぁ。あと、市川團十郎さんの演じる山本五十六・連合艦隊司令長官もなかなかでした。さらに、檀れいさん、素敵♪(笑)

ここからは、蛇足。
今回も、映画『硫黄島からの手紙』と同じく、陸軍の制服に間違いがあったのは、私には不満でした(苦笑)。
軍服の袖にある「袖線」、一本が大尉・中尉・少尉などの尉官、二本が大佐・中佐・少佐(佐官)、三本が大将・中将・少将(将官)を表すのですが、袖線だけでなく星章が必要で、星の数によって階級が示され、例えば袖線一本に星ひとつなら少尉、袖線三本に星三つなら大将となるところ、ドラマでは袖線のみ。
実はこれは更に間違いを重ねていて、袖線・星章が採用されたのは「三式」と呼ばれる軍衣で昭和18年の制式、開戦時はまだ「九八式」なんですよね。襟章はきちんと九八式になっていただけに、ちょっと残念。
ちなみに私のブログバナーの左側は、三式襟章で中佐を示しています。九八式だと、同じ中佐でも星が中心に合わせて配置されるんですよね。それだと階級が上がって星を増やす場合、全部の星章を付け替えなければならないということで、三式からは陸軍も、海軍と同じように片側に寄せる形に変更されました。
※詳しくはフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の以下のページをご参照下さい。
(こんな部分をあえて指摘するから、思想的に誤解されるんだよなぁ・苦笑)

とにかく、もう一度、今度はしっかりと全編を観たい! 近日中の再放送に期待したいけど、仕事との関係もあるし、観れるかなぁ…。