国際観艦式で、海上自衛隊の護衛艦「いずも」艦上から観閲する岸田首相(中央)=6日午前11時10分、神奈川県沖の相模湾(代表撮影)

岸田文雄首相は遊説中、暴漢の襲撃に遭う難事に見舞われたが、内閣支持率は5割に回復した。先日の産経新聞・FNN合同調査では支持が50・7%、不支持が44・7%。が、世の中、働き者がすぐに人気者になるわけではない。

岸田内閣はとにかくよく働く。人のやらなかった仕事、人に嫌われてきた難題を手がけることは、岸田氏の趣味なのかもしれない。難題の一つが防衛費の増額である。今年1月の施政方針演説で岸田首相は「新時代リアリズム外交」展開の意図を表明した。それは何を意味しているのだろうか。多分、こういうことだろう。「昨年末、1年を超える時間をかけて議論し、検討を進め、新たな国家安全保障戦略などを策定」した。

この戦略文書で特に強調されているのは中国の強大化であり、それに対する深刻な懸念である。中国が力による一方的な現状変更の試みを拡大しつつある旨が指摘される傍ら、その国際的な影響力にふさわしい責任ある建設的な役割を果たすよう促している。裏を返せば、中国の対外的な姿勢やその軍事力増強に深刻な懸念を抱いているというのである。

この事態に対して岸田首相は、どう対応したか。中国に現状変更の意図があるのなら、説得は役に立たない。対抗措置が必要である。そこで、浜田靖一防衛相、鈴木俊一財務相に、防衛費と関連予算合計で、国内総生産(GDP)比2%に達する予算措置を講じるよう指示した。

井の中の「酷評」気にするな

すると果たせるかな、朝日新聞(電子版)が2月8日付で「軍拡やめて生活守る政策を」と叫ぶ女性たちの声を報じた。

井の中の蛙(かわず)、大海を知らず。周囲を北大西洋条約機構(NATO)加盟国で囲まれている永世中立国スイスは、絶対に安全なはずなのに、昨年、議会で軍事費の増額を決めている。しかも、スイスは国民皆兵の国である。だから成人男子には兵役義務が課される。また核シェルターが整備されていることでも知られる。

そのスイスから昨年4月にカシス大統領が来日、岸田首相と会談し、両国が民主主義や法の支配、多国間主義に基づく国際秩序を支持していく旨、確認している。同盟主義を採る日本と、永世中立国スイスとの間では対話が可能である。当然のことだろう。

他方、岸田首相とロシアのプーチン大統領は直接には会談していない。電話会談があるのみだ。昨年2月17日に両首脳が話し合ったのは外務省によると、ウクライナ問題である。プーチン氏最大の弱点について実のある対話なぞ成り立つわけがない。責任はプーチン氏にある。

岸田首相は中国の習近平国家主席と昨年11月の会談で、確立された国際ルールの下で中国が国際社会に対し貢献可能である旨を表明、経済分野では互恵的協力が可能であることで一致をみた。が安保問題にはあまり触れなかった。

世の中には様々な岸田評がある。その一つは今年4月2日に朝日新聞(電子版)が掲載した内田樹氏の酷評である。曰(いわ)く、「今回の防衛費増額の背景にあるのは岸田政権の支持基盤の弱さだと思う。…今回の防衛予算や防衛費をGDP比2%に積み上げるのも、米国が北大西洋条約機構(NATO)に求める水準に足並みをそろえるためであって、日本の発意ではない」

内田氏は、岸田首相とNATOが良好な関係にあるのを知らないらしい。今年1月31日、首相は来日したストルテンベルグ事務総長との間で次のような共同声明を発表している。「日本の岸田文雄首相とNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2023年1月31日、東京で会談…両首脳はNATOと日本の協力関係を今後も推進していくことを確認した」

国民は自衛隊に好意的だ

先の内田氏が「朝日」に寄せた論考は「政権の延命、自己目的化の果て」と題されているが、「朝日の延命、自己批判次第」と言うべきだ。「朝日」や内田氏とは違い、日本国民は自衛隊に対してすこぶる好意的である。

昨年末に内閣府が実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」によると、「自衛隊に対して良い印象を持っている」国民は90・8%、「自衛隊に対して関心がある」国民は78・2%と高い。

こういう世論を背景に、「自衛隊最高指揮官、内閣総理大臣、岸田文雄」は今年3月26日、私がかつて教鞭(きょうべん)をとった防衛大学校の卒業式で、こう訓示している。

「我が国は、我が国だけで守れるものではありません。米国でさえ、一国で自国を守ることは困難な状況にあります。同盟国や同志国との連携は不可欠です。…同盟国・同志国との関係は一層強固なものとなっています。その上で、その関係に魂を込めるのは皆さんをはじめとする自衛官です」

勇将の下に弱卒なし。防大卒業生たちは、よき幹部自衛官たらんとする覚悟を新たにすることであろう。それこそが望ましい。(させ まさもり)産経新聞

 

内閣府が実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」によると、「自衛隊に対して良い印象を持っている」国民は90・8%、「自衛隊に対して関心がある」国民は78・2%と高いのだ。

 

これだけの国民の自衛隊は支持があるのに、憲法に自衛隊を明記することに共産党、立憲民主党、社民、れいわは反対である。自衛隊は左翼憲法学者に憲法違反と非難をされても、日本を守る活動に日々邁進をしていることは深刻な事実だ。自衛隊に必要なものは名誉である。そして圧倒的な国民の支持である。