今年5月、台湾海峡を航行した米海軍のミサイル駆逐艦マッキャンベル (米海軍提供)

 9月初旬、安倍晋三首相の辞任発表を受け、菅義偉内閣への流れが固まった頃、米国の外交専門誌に驚くべき論文が掲載された。「米国は台湾防衛意図を明確化せよ」と論ずる小論の著者は米外交問題評議会会長で元国務省政策企画局長のR・ハース氏だった。従来米国の台湾政策は、中国の台湾侵攻への対応を明確にしない「戦略的曖昧さ」だった。1972年のニクソン訪中以来、米国はこの曖昧さにより中国の台湾侵攻と台湾の独立宣言を抑止し、東アジアの現状を維持してきた。

 ところがハース論文はこの伝統的「曖昧戦略」を百八十度転換し、米国の台湾有事直接軍事介入意図を明確にすべし、と主張する。当然米国の東アジア専門家たちが侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を始めた。されば、菅内閣が誕生したばかりの日本も頭の体操だけはしておいた方がよい。今回は米国国内の関連議論を紹介しつつ、日本の対応を考える。産経新聞

 米国は台湾関係法、台湾旅行法だけでは台湾防衛についての責任が明確でない。中国は台湾は核心的利益として併呑するつもりである。そうなれば同盟国は米国から離反するか独自の核武装に向かう。