ソウルの韓国国会で演説する文在寅大統領=7月16日(共同)

 いま韓国ではまたもや「親日残滓(ざんし)の清算」が喫緊な課題として浮上したらしい。与党、共に民主党は国立墓地に眠る「親日出身者」の遺骨を掘り出して移葬する「破墓法」(国立墓地法の改正)を発議、今国会で可決する構えだ。野党は「前近代的な“剖棺斬屍(ざんし)”(遺体を棺(ひつぎ)から引き出して斬刑に処する「凌遅(りょうち)の刑」)ではないか」と批判するが、法案には3分の2近い国会議員が賛成の見込みという。

 ≪百年前と変わらぬ韓国政治≫

 “剖棺斬屍”(凌遅の刑)は、人類史上もっとも野蛮な刑罰だ。墓を暴き、遺体を取り出し切断してさらす方法で死んだ人間の過去の罪を問い、その一族を罰する。朝鮮半島では李王朝末期の1885年、金玉均氏ら急進開化派官僚によるクーデターに参加した独立党員とその家族をこの刑で罰した。その時、九死に一生を得て日本に逃れていた首謀者の金玉均氏は約10年後に上海で暗殺され、遺体は本国に送られるが、時の朝鮮政府は「反逆者」への怨恨(えんこん)を晴らすため「凌遅の刑」に処した。

 この野蛮な一連の出来事は日本でも特筆大書され、韓国を支援し連携を唱えた知識人までが嫌韓へと傾いた。金玉均氏と親交があった福沢諭吉先生も朝鮮との協力をあきらめ、「朝鮮人民のためにその国の滅亡を賀す」(1885年8月13日付『時事新報』)と書き立てた。「脱亜論」に連なるこの社説は当時日本でも問題となり、『時事新報』は1週間の発行停止処分を食らう。福沢先生の挫折感と悲憤慷慨(こうがい)の気持ちは次の文を読み直しても伝わる。

 「人●娑婆世界の地獄は朝鮮の京城(ソウル)に出現したり。我輩は此國を目して野蠻と評せんよりも、寧(むし)ろ妖魔惡鬼の地獄國と云わんと欲する者なり」

 ≪文氏に物申したい≫

 韓国にとって「親日清算」は死活にかかわる問題とは思えないが文在寅氏は大統領就任後、最大にして最重要課題として「過去の清算」をあげ、「親日残滓の清算は後回しできない課題」と訴え続けた。「親日清算は公正で正義の国(づくり)のはじまり」(2019年3月1日)とも言った。

 ここにきて文氏の親日残滓清算の望みは「破墓法」の形で実るかもしれない。しかし、前近代的な愚かなことをやっていては、朝鮮が植民地に転落した前轍(ぜんてつ)は踏まないまでも、国家が駄目になっていくのではないか。そうならないために文氏に申したい。

 まず、反日のため国の安全保障を危険にさらすな。文氏は大統領就任後、中国に「日米韓協力関係を軍事同盟にはしない、米国や日本が進めようとしているミサイル防衛システムに加入しない、高高度ミサイル防衛システムの追加配備はしない」という「3不」を約束したが、根底には文政権の反日の理念がある。

 文政権が見せた数々の不審な言動、例えば日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると脅しに出たのは日本とは安保上の協力はしないという姿勢を鮮明にしたものだ。核をもって韓国を人質にとっている北朝鮮を喜ばす措置としか思えない。

 次に、反日のため国益を犠牲にするな。一国の対外政策の根幹は国際社会で友人を増やし、他の国と良好な関係を構築することだが、文政権はその逆だ。日韓両政府がやっとの思いでまとめあげた慰安婦問題の日韓合意を反故(ほご)にし55年前に困難な交渉過程を経て合意に漕(こ)ぎつけた日韓基本条約を否定するかのように「徴用工」問題を持ち出した。結果、日本企業の韓国離れが加速した。

 ≪敵と手を組み国壊すな≫

 文氏は日韓関係の冷え込みは「むしろ(我が国を)“誰も揺るがすことのできない国”へと跳躍する機会をつくってくれた」(8月15日)と高をくくっているが輸出に頼っている韓国経済は、上半期の貿易指数だけをみると40%と激減、来年はOECD(経済協力開発機構)に加盟する37カ国で最下位を記録するといわれる。

龍谷大学教授・李相哲氏

 最後に、反日のため敵と手を組むな。文氏が対外政策の主眼を「北朝鮮」に置いているという事実は周知のとおりだ。日本と米国との関係では「北朝鮮」がどう反応するかを意識し行動しているとしか思えない。そのような事例は枚挙にいとまがないが8月29日、米国が開催を呼びかけた日米韓国防相会談に韓国が参加せず、米軍の統合参謀本部議長の訪韓要求に無回答で対応したのがその例だ。

 文政権は「新型コロナの状況」を理由にあげたが、同時期に中国の外交を担当する楊潔★氏の訪問は受け入れている。しかも文政権は北朝鮮との対話再開には政権の命運をかけ、北朝鮮にラブコールを送り続けている。同盟国の米国と、日本より北朝鮮が大事という姿勢をもはや隠そうとしない。

 このように、韓国、いや文政権は「親日の残滓」さえ清算すれば正義で公正な国をつくれるとして反日を国政運営の根幹にすえているが、そうしているうちに国家は劣化し、そのうち壊れてしまうのではないかと心配だ。(り そうてつ)産経新聞

 「剖棺斬屍刑」墓に葬られた死体を掘り起こして「斬刑」又は「凌遅処斬」する刑罰。21世紀の時代には考えられない非道なことをするものだ。親日だった韓国人をそこまでするのは文政権は狂気である。