トランプ大統領=米ミシガン州バトルクリーク(ロイター)

【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害に踏み切ったのは、米政権がイランに突きつけた「ウラン濃縮の完全停止」や「外国テロ組織の支援中止」といった12項目の要求を受け入れさせるには、従来の制裁圧力だけでは極めて困難であるとの判断に至ったためだ。

 トランプ政権が2018年5月、オバマ前政権下の15年に締結されたイラン核合意からの離脱を表明したのは、合意内容が「核開発の制限は10~15年間のみ」「弾道ミサイルの開発やイランのテロ支援を制限していない」などの欠陥を容認できなかったためだ。同月に提示された12項目要求は、こうした欠陥を是正するのが狙いだった。

 特にテロ支援に関し、イランは対外工作の元締め格だったソレイマニ司令官の主導でイラクやシリア、レバノンのイスラム教シーア派武装勢力に兵器や資金を提供し、いわゆる「シーア派の弧」を形成。仇敵(きゅうてき)イスラエルの打倒をにらんだ中東での影響力拡大を着実に進め、米政権にとって重大な懸念材料となっていた。

 米メディアによると、ソレイマニ司令官の殺害はオバマ前政権でも検討されたものの、核合意の締結を優先させる立場から実行が見送られた。トランプ政権も現在の核合意に代わる新たな「包括的核合意」に向けた協議にイランを誘い込むため、制裁を背景とした外交解決を模索してきた。

こうした米政権の態度を「弱腰」と誤解したイランが、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃や米軍無人機の撃墜など挑発行動をエスカレートさせた、と米国は見ている。昨年末にはイラク北部の基地がシーア派武装組織に攻撃されて米民間人が死亡し、トランプ氏の忍耐が限界に達した。

 重要なのは、米国民が1人でも犠牲となればイラン指導部に究極の責任を取らせる決意を米政権が行動で示したことだ。トランプ氏は5日、イラン高官がソレイマニ司令官殺害への報復として米軍施設を攻撃すると述べたことに関し「(その場合は)大規模に反撃する」とたたみかけた。

 司令官殺害で中東の緊張状態が高まったのは確かで、イランの意を受けた武装勢力によるテロ攻撃も懸念される。同時に、制裁に苦しみ、米政権の「倍返し報復」の覚悟も見せつけられたイランに「米国と全面的に戦う余裕はない」(カーネギー財団のカリム・サジャドプール上級研究員)のも事実だ。現時点で争いの主導権は米国が握る。

 米政権は今後、中東最大の同盟国であるイスラエルや、サウジアラビアなどイスラム教スンニ派諸国と連携してイラン封じ込めを強化し、同国指導部の屈服を図っていく考えだ。産経新聞

戦争できないトランプ大統領というレッテルは撤回すべき、トランプ氏は、イランとの交渉の邪魔になるスレイマニ司令官を殺害した。それは、イラン政府にも米国のヒューミントがいると考えるべきである。