今回の日本の措置に対して韓国国内では反発が起きている(写真:AP/アフロ)

 7月4日、焦点の3品目について個別許可がスタートした。個別許可になると、半導体素材の供給に支障が出てきて、韓国企業の生産に大打撃になるとの報道がある。

 果たしてそうだろうか。影響はもちろんあるが、報道されるほど深刻なものだろうか。

 個別審査に90⽇かかると報道されている。これは輸出許可について、⾏政⼿続きとしての標準的な処理期間が定められており、それが90⽇となっているに過ぎない。

 公表していないので、かつて私が担当していた経験と企業の最近の他のケースでの実績から推測すると、平均的にはおよそ4~5週間というところだろう。もちろん、怪しげなケースなどは追加的に詳細に輸出者から聴取して慎重に審査をするので、中には90日かかるものもあるだろう。しかし多くは通常のまともなケースだ。

 個別許可には相手方による品目の管理状況を証明する誓約書が必要で、これを相手方からもらうのに手間がかかるという。確かにそうだが、一旦もらってしまえば、あとはパターン化して慣れてくるのが現実だ。

 この4日から個別許可に切り替わるので、日本の輸出者は既に駆け込みで出荷している。これまでも個別許可で輸出していた企業もあって、こうしたところはこれまでどおりだ。

 このように考えると、蓋を開けてみると報道されるほどの深刻な影響ではない可能性もある。仮に深刻な影響が出るとなると、対韓国強硬論者は留飲をさげ、韓国を揺さぶることになるが、そうした余計な思惑を排して、素直に事実を見ていきたいものだ。

世耕弘成経済産業相のコメントは適切か

 ちなみに、補足解説を書いた直後、世耕弘成経済産業相がツイッターで今回の措置の「経緯」を3点挙げたので、追加コメントしたい。ちなみに、世耕大臣は4点目も上げているが、これは、(1)~(3)の総括的内容なのでコメントは割愛する。その3点とは

  • (1)輸出管理での意見交換に韓国が応じていないこと
  • (2)輸出管理に関する不適切な事案が発生していること
  • (3)元徴用工問題などで信頼関係が損なわれたこと

 しかし私はこうした説明の仕方が問題だと思っている。

 (1)(2)は確かに輸出管理の観点で重大な問題で、適正な輸出管理を行うために今回の措置は当然行うべきだ。ところが(3)はあくまで一般的な「背景」で、今回の措置を行う「理由」とは違う。理由はあくまでも輸出管理上の理由でなければならない。

 (1)(2)と(3)を混在させて、「経緯」として説明していることが問題なのだ。

 (3)は国内の対韓国強硬論の声に応えたいのかもしれないが、それは国内政治の論理だ。

 また韓国にもそうしたメッセージを送りたいのかもしれないが、それは本来の輸出管理とは別次元の問題だ。

 その結果、「事実上の対抗措置」といった、不必要に勇ましい報道や、逆にそうした誤解に基づく批判を招いているのではないか。欧米のメディアまでトランプ氏による制裁と同列に見るという、とんでもない誤解まで生じている。

 (韓国がどうであれ)世界の世論を納得させるためには、今回の措置の正当性の主張はあくまで輸出管理の論理で完結しなければならない。米中による身勝手な論理による制裁で世界秩序が揺らいでいるからこそ、日本は適正な論理を示すべきだ。それが日本の寄って立つ基本ではないだろうか。日経ビジネス

輸出管理での意見交換に韓国が応じていないこと、輸出管理に関する不適切な事案が発生していることで、韓国の輸出規制になったのである。