自動車レース・ブルース | 愛染恭介のやぶからぼう日記

自動車レース・ブルース

そういえば、あの人どうしているんだろうか?
なんて考えていると、何年もご無沙汰だった方が
翌日あたり十中八九お店にひょこっと顔を覗かせてくれる。
もう、あまりにも当たり前の感覚なので不思議に思わないが、
その人の気持ちや身体がこちらに向かっていると、それを事前に察するのか、
それとも自分が呼んでいるのか、もはやどちらでもいい。

そんなこともあって、久しく会っていない友を思う。
高校の頃筆箱に書いた「Fucker」の文字を見つけられ、
イギリス人宣教師の逆鱗に触れさせた、阿呆なやつ。
奴の車好きに付き合って、夜中の通称「04」レースをよく見に行った。
アクセルを一気に踏んで急発進での400メートルタイムを競う自動車レースは、
公道を封鎖しての違法レースで、時には車がスピンしてオーディエンスに突っ込んでくる。
そのさまは、さながら
友部正人のトーキング・自動車レース・ブルース。

もし君が北陸の方へ旅することがあったら
土曜日の夜、ちょっと高岡に寄ってみるといいよ
駅前は朝までレース場
200台もの自動車がブレーキを軋ませながら
ついでに命まで軋ませている
自動車が宙返りするたびに
人生がさかさまに見えるんだ
ホントにステキだよ!

ステキな与太者はとっても悲しすぎるものだから
色めがねかけて言い訳を考える
でもステキな与太者はしゃべることに慣れていないので
「何だこのヤロー、ウルセエナー」って言ってしまう
だから、おまわりは喜んで200人も捕まえてしまう
明日の朝の新聞を読めば、誰もが高岡は
健全なところだと思うに違いないよ

友だちはその後走り屋を気取って~だから奴の車に同乗するのは
気が進まなかったけれど~蛇行した山道を激走して崖から数メートル下の谷底へ
落ちた。
でも悪運強くかすり傷ですんだ。
と言うと、いかにもタフガイのようだけどどちらかと言えばオタク。
会えば3秒で話は済むので、会いたくもあるし会う必要もないような。

なんであの頃はスピードに酔いしれていたのだろう。
車も音楽も。
今はできるだけスピードのないものがいい。
蝶よりもゆっくり歩き、亀の時間に寄りそう。
なんていってもベルクがそれを許してはくれないんだけど!