京都、今日途 | 愛染恭介のやぶからぼう日記

京都、今日途

あっという間に一週間前の話になってしまったが、

忘れずに京都のことを。

ひとり前ノリした私は、早朝から大徳寺へ。何を思ったか全く興味のなかった庭園てやつを

見に行ったのも、岡本太郎が「日本の伝統」という本で独自に展開する論評が面白く、

それを確かめに行きたかったから。

平日の朝で、誰もいない石庭をひとりぼーーーっと眺める優雅なひととき。

これといった感慨もなかったけど、砂と石組で創られた「大海原」からは潮騒が聞えてきた。

「世は満足じゃ」と踵をかえすと、坊さんに呼び止められ、

「どこから来なはった。ゆっくりしてきなはれ」と茶室に呼ばれ、「姿勢が悪い」と説教が始まり、

しまいには石庭がよく見える法要の間で座禅を組まされた。

「どうせ限りのある人生。長く息をすることを習得すれば、こころが善くなる。心が善くなれが顔が善くなる。

茶道にしても、全てはこれを習得する為にある」と達磨さんの説法が始まった。

一瞬「これは勧誘か?」と思ったが、たしかに座禅の正しい姿勢を保ちながら長く呼吸を整えていると、

眠れなかった深夜バスの疲れも吹っ飛んだ。ヨガにしても、この呼吸法というものを

習得するためにあるのだろう。お礼をして次は岡本太郎酷評の天竜寺へ。


岡本太郎が言ったからではないけれど、そりゃあ天竜寺は酷いものだった。

観光地化しているというのが大きいが、庭園を見ても大徳寺の後では手抜きとしか思えなかった。

ここが世界遺産とは、世界遺産というやつがどんなものか分った気がする。世界遺産は

『世界遺産』という名の会社で、世界そのものを遺産にしようと企んでいるのだな。

今度は逆に岡本太郎絶賛の「苔寺」に向かったのだが、何年前から一般の拝観が出来なくたっていた。

くやしい!だがしかし今回の旅は定番の銀閣寺~興福寺、祇園周辺を散策できて

初めて京都らしいものに触れたような気がする。


え?肝心のライブは?えー、そりゃもう最高でした。

京都の「拾得」といえば東にも名の轟く老舗の名ライブハウス。こんな場所でこんな

弱輩ものが出演出来たのも、浄土真宗坊さんたちの企画の賜物。

同じくゲスト出演した豊田勇造さんも15年ぶりくらいの再会であったが

(正直前回のことはあまり記憶にないのだが)、すんばらしい演奏でした。

その豊田勇造さんは、タイを始めアジア各国をよく旅している方。

彼のMCが印象に残った。

「チベットの国の人は感情や意思表示を強く出すことを、あまりよしとはしない。とくに坊さんはそう。

その坊さんたちがあれだけのことをしたってのは、よっぽどのことやったんやなあ、と思います」