本屋に出た瞬間に買ったのに、全然時間なくて読めなかった

この本、やっと読めました。おもしろかった~ラブラブ


湊かなえ、すごい好きです。

なんとなく本屋で買った「告白」がスゴすぎて、3回くらい読み返して、

この人、何者??と、必死で調べました。

広島県の因島の出身で、淡路島の高校で家庭科の非常勤講師を

していた人で、今は主婦業の傍ら、書かれているそうで。


その後の「少女」も「贖罪」も、がっちりツボで、

わたしの中では「絶対にハズさない作家」さんの一人です。

(逆に一つも当たらないのが、石田衣良…。

当たってる人は、世の中に多数いるのでしょうけど。

でも、彼が湊さんの新人賞受賞作の「聖職者」を連作にしたら、

と勧めて「告白」ができた、とネットに書いてありました)


ティーンネイジャーが主役のミステリー&ノワールというのが、

少女漫画好きにはたまらん、という感じで。


一番好きな小説は「ライ麦畑でつかまえて」だし。

10代の内面を描いた純文学を永遠に求めています。

(でも、サリンジャーは30才でこの小説を書いたそうで、

それがスゴい、と村上春樹が「翻訳夜話」で書いておられました。

サリンジャー、今年1月に亡くなってしまいました。

彼が小説「ライ麦」に同化するように隠遁生活を送っていたり、

ジョン・レノン暗殺犯の青年が警察が来るまで、読み続けて

いたのが「ライ麦」だったり、という逸話が、

小説をさらに完璧にしているような)


さらに、湊さんが描くティーンネイジャーたちが、すごく現代的でリアル。

学校の先生をされてた、ということで、なるほどなあ、と。


だいぶ前ですが、蜷川幸雄監督の映画「青の炎」

(嵐の二宮くんとあやや主演の)がすごく良かったので、

貴志祐介の原作を読んだら、少年の不安定さとか攻撃性が

テーマになっていて、そこに惹かれたのに、

小説の中の主人公は、どうしてもおじさんが描いた少年ぽくて

無念でした。


で、前置きが長くなりましたが、「夜行観覧車」。

もう、子育て中のママをたまらなく不安にさせる小説でした(笑)。


帯に書かれているのは、

「父親が被害者で母親が加害者ー。

高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。

遺された子どもたちは、どのように生きていくのか。

その家族と、向かいに住む家族の視点から、

事件の動機と真相が明らかになる」。


子供の受験と親の関わり方、が、かなりテーマになっています。

母親たちの世界では、子供の出来の良さが、母親の評価

みたいな競い合いがあって、

母親の心情としては、本当に子供のためを思って、

受験や勉強を駆り立てる部分もあったりして、

でも、そんなものに翻弄されて、親に従わざるをえない

多感な子供たちは、息苦しさの中で自分でもよくわからないまま

強迫神経的に追いつめられ…っていう。


読んでて、この先、どうやって子供と関わっていけばいいんだろう、

と真剣に考えこんでしまいました。。。

港区に住んでたら、下手したら幼稚園から大学まで

全部受験するはめになったりするんだよなあ…とか。

(中学受験率が5割を超えてるそうで)

受験の挫折って、まだ無防備な子供の心には全人格を

否定されるような深い痛手だよなあ、とか。

勉強を強要するようなことは絶対いわない!とか思っても、

子供って、母親の深層心理を汲みとる存在なんだよなあ、

「好きにしなさい」なんてホントに思えるのかなあ、とか、

ほんとに好きにされて、人生どうにもならなくなったら、

これまた母親の責任なんだろうか…とか。


国連で、日本の過度に競争的な教育(受験)が再三批判されて

いるそうですが、それもこれも、アメリカみたいに、

大学の入学間口を広げて、

ちゃんと勉強しないと卒業できないという形にすれば、

北欧のように基本ずっと公立というわけにはいかないにしても、

だいぶマシになるような気がするのに。

だいたい、わたしが中学生くらいのときから、そんな議論が

なされている気がするのに、どうして一向に変わらないんだろう。

大学って、いい大人が通う幼稚園みたいで人を堕落させる場だと

通ってたときは思ってたけど、

今は、入学するなり就職活動する場になっているらしいし。

そして、全然就職できなくなってるし…。

東大の価値だって、世界では全然で、

なんでこんなことになってるんですかね、ニッポン。


さらに、母親の子育て不安については、

香山リカ著「母親はなぜ生きづらいか」によると、

江戸時代には、女性は子供の教育に関われなかったが、

明治の近代国家構築の中で、男性は労働や兵役に従事、

女性は良妻賢母、というのが国家観に適合し、

さらに女性にとっても、やっと自己実現の場を得られたという

ことで、利害が一致し、「教育ママ」というのが生まれ、

育児の責任は女性が一身に負う(子供の学歴含め)

という概念が定着したけれど、現代のママたちを苦しめている

のは、まさにその概念で、「母性があるから子育ても

苦でないはず」と知らない間に信じ込まされた女性たちは、

その後、大変なプレッシャーと現実的負担を抱えながら、

ひとりで子育てをしなければならなくなった」、と指摘されています。

それが、少子化の原因にもつながっている、と。

(すごい大雑把にまとめてしまいましたが)


この小説の解説みたいになっている部分もあって、

「わが子を小さいうちから受験戦争に駆り立てたり、

いくつもの習い事に通わせたりしようとする。

彼女たちの多くはわが子と過剰に一体化し、

誰もその中に入れない緊密な”母子カプセル”を形成するのだ。

しかし、母子共同戦線を張るうちに子供の自他境界までが

崩れ、どこまでが自分の願望、欲望で、どこからが

子供のそれなのかわからなくなっている母親たちは、

子供の反抗や失敗に非常に弱いという特徴も持っている。

(中略)これは母親自身にだけ問題があるというのではなく、

「母子は一体と期待する世間や社会、さらにはマスメディアにも

大きな責任があることなのだ」



いつの間にか、気がついたら、自分もそうなってそうで怖い。。。

というか、幼稚園受験が控えているため、

「挨拶できない、どうしよう」「ママと離れると泣いちゃう、どうしよう」

なんて、子供を時限付きでコントロールしようとしている時点で、

すでにそうなってる感じが…。


ただでさえ、子供が少なくなって、そのひとりひとりを

まるで芸術作品でもつくりあげるかのように大切に育てなければ

ならない、みたいな流れになっているのに。

「(昔のように)おおらかに、のびのび育てたい」と思うのは、

きっと、放っておいたら極端にその流れにのまれて、

歪つになりそうで、怖いから、なんだろうなあ。


ついでに、この本では、日本男性の中にある

根強い「母親幻想」についてもかなり書き込まれています。



そんなわけで、「夜行観覧車」。

冷や汗がでるくらい身につまされながらも、

一度読み始めたら、止められない、相変わらずのおもしろさでした。

(でも、わたしはやっぱり「告白」が一番おもしろかったです。

松たか子主演の映画みたいんだけどなあ…)


ついでに、ティーンネイジャーの犯罪小説では、

桐野夏生の「アンボスムンドス」と「「リアルワールド」が

すごくおもしろいです。

特に、「リアルワールド」を読んで、

子供を小さい頃から、通勤ラッシュの電車に乗せて通学

させることだけはやめよう、と心に誓いました(笑)。