「僕等がいた13巻」がもう出ていたなんて、全然知らなかった!

12巻の発売から2年以上のブランク。

作者が精神を病んでしまったのかと、半ば諦めてました(涙)。

感無量です。


↓ これです。
僕等がいた 13 (フラワーコミックス)/小畑 友紀
¥420
Amazon.co.jp

すごい漫画オタクです。

専門は、70~80年代少女漫画。

物心ついたときからつい最近まで、定期購読してたのが、

男性誌は、月刊・週刊「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」

「ビックコミック」「同オリジナル」。

女性誌は、「りぼん」「なかよし」→「mimi(後にkiss)」

「コーラス」、「別マ」。


絶対に漫画家になろうと思って、小学校時代、

せっせと投稿していたのに、

(同期生はさくらももこ、と矢沢あい(笑))

中学に入って男女交際に目覚めてしまったのが、

今でも悔やまれます。


立ち読みしてると、すぐにそっちの世界に行ってしまうので、

いきなり、ゲラゲラ笑ったりボロボロ泣き出したりして、

本を閉じた瞬間、今、自分がどこにいるのかわからない、

という状態に陥りがちです。


子供が産まれるときに、家族に一番心配されたのは、

「絶対、子供を忘れてくるから、本屋には行くな」

ということでした(笑)。


その忠告を破って、毎週、本屋に発売されていないか

チェックに行っていたのが、冒頭の「僕等がいた」13巻です。

「僕等がいた」は、わたしの中では、

紡木たく「ホットロード」「瞬きもせず」以来の20年ぶりの

大ヒットなのです!


わたしの「少女漫画グッときた史」でいくと、

70年代、「ベルばら」の池田理代子、「ガラスの仮面」美内すずえ。

このへんは、もう神の伝説の域なので語ることはないとして、

自分の人生に一番大きな影響を与えたのは、

里中満智子「あした輝く」、大和和紀「ヨコハマ物語」。

この二人は、司馬遼太郎にヒケをとらない素晴らしい作品を

たくさん書いていらっしゃいます(←いきなり敬語になってしまった)。

あした輝く (1) (中公文庫―コミック版)/里中 満智子
¥600
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ヨコハマ物語 (1) (講談社漫画文庫)/大和 和紀
¥683
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これらの作品は基本的に、骨太大河ドラマなので、

ストーリー、構成が素晴らしく、背景に深い思想・哲学があります。


そこから新境地を開いたのが、やはり一条ゆかりだと思うのですが、

「デザイナー」あたりから絵が洗練されてきて、

フェミニズムがテーマの主軸になってきます。

基本的にメロドラマなので、わんわん泣いて5秒で忘れる、

という最高のエンタメ作品。

先週も病院の待ち合い室で、「プライド」最終章を立ち読みして、

わんわん泣いてきました。

プライド (1) (クイーンズコミックス―コーラス)/一条 ゆかり
¥420
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しかし、還暦で、こんな第一線で描いているというのが、

すさまじい。もうはるかに人間を超えていますね。

「コーラス」久々に読みましたが、一条ゆかり以外に

読むところがなかった。「コーラス」は彼女のために

作られた雑誌だそうですが、今でも彼女が支えているんですねえ。


ただ、わたしは、小説でも漫画でも、ストーリー性のある純文学が

好きです。小説で言えば、桐野夏生、角田光代、吉田修一あたり。

純文学的な、痛い感性というようなものを、

少女漫画で表現したのは、紡木たく、だったと思います。

あの、外枠を点線にして青春の「まぶしさ」を表現する手法は、

本当に斬新でした。思い出しただけで、胸が痛い…(涙)。


今でも、辛いけど泣けない、みたいな状況になると、

「ホットロード」か「瞬きもせず」全巻を引っぱり出してきて、

思い切り号泣してから寝ます(笑)。


ホットロード (1) (マーガレットコミックス)/紡木 たく
¥410
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瞬きもせず (マーガレットコミックス (1384))/紡木 たく
¥410
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余談ですが、中学のころ、みんな「ホットロード」のまねして、

髪の毛脱色して、腕に安全ピンで好きな人の

イニシャル彫り込んでましたね。

わたしの親友は、気合い入りすぎてて、今でも腕にくっきり

跡が残ってます。わたしのは三日で消えましたけど(笑)。



その後も、いくえみ綾や、矢沢あいなど、純文学的な繊細さを

もった作家が現れてますが、いくえみ綾はストーリー性がいまいちで、

矢沢あいの「NANA」はポップに高度に完成された作品ですが、

「ホットロード」に比べたら、全体的に説明調な感が否めない。

二人ともデビューから大好きですけど。

紡木たく作品にある、根底からぐらつくような不安定さとか、

何気ない一言が持つ人生の耐え難い重みとか、

そういう現実世界をどこまでも浸食していきそうな力は、

ないかなあ。

NANA 21 (りぼんマスコットコミックス クッキー)/矢沢 あい
¥420
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で、やっと「僕等がいた」ですけど、この作品が「瞬きもせず」に

匹敵するかというと、またちょっと違うんですけど、

試みていることが文学的で、かなり荒っぽいんですが、

ぐりぐり深いところを抉っていく感じが、「痛く」て、いい。


人間の病的な依存の関係をテーマに扱っているのですが、

絵のタッチがイマドキで、かわいらしくて、台詞も軽妙。

そのギャップが「痛さ」を醸し出すのに一枚かってます。


主人公の好きな男の子が、気味が悪いくらい空洞感があって、

正直、コワい。間違いなく殺人犯になるタイプですよ。

人間的なシンパシーがまったく感じられない。

笑顔は人なつこくてかわいいんだけど(そこがまたコワい)、

この笑顔だけで、こんなまっとうな女子高生が、

こんなに愛してしまうものかなあ、という疑問が残ります。

「コワイけどどうしようもなく惹かれる」という性的な関係なら

納得いくのだけど、(その場合、間違いなく殺されますが)

どうも、彼女が感じているのは、友情まで含めた人間愛に

近いもの。つまり、いわゆる少女漫画的なラブみたいで、

そこがどうしても、破綻しているような気がするんですけど…。


ただ、その破綻も含めて、すごい力のある作品で、

本当に13巻が待ち遠しかったのでした!

51話と52話の間に1年半のブランクがあったそうですが、

これだけのものを書き込んでいたら、精神的にまいってくる

だろうなあ、という感じがします。(本当の理由は知りませんが)。


ちょっと似たような雰囲気の作品で、芦原妃名子の「砂時計」

というのがあり(映画やドラマ化されましたね)、

こちらも、わたしの中では久々の大ヒットでしたが、

こちらは完全に韓流ドラマです。

(韓流もすごい好きで、かなり語れますので、また後日)

完全に「閉じた」世界で安心してお話に浸ることができ、

そういった意味で最高です!

砂時計 (1) (Betsucomiフラワーコミックス)/芦原 妃名子
¥410
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いや~、しかし、「僕等がいた」13巻、10月末に

出ていたんですねえ。この衝撃、すごく伝わりにくいですよねえ。

まわりに少女漫画や韓流について語り合える友達が

まったくいないので、吐き出すように長くなってしまいました(恥)。

おつきあいいただいて、ありがとうございます。