29・2・3

 事態を正確にするよりも、問題点を明らかにすることをポイントにして書かせて貰います。

 企業などの長時間労働が原因で従業員が自殺をしたという訴訟をきっかけとして、法律をもって現在青天井となっている残業時間に上限時間を設ける方向で政府部内で議論が本格的に進められている。

 私も労働時間を適正な範囲内に抑えることの趣盲に反対するものではないが、私自身時には月二〇〇時間を超える超過勤務を余儀なくされていた現場で働いていた経験を持っているだけに全く無条件で賛成し難いものを感じるのである。

 その現場では、例え超過勤務時間が二〇〇時間を越えようと予算の関係で月六〇時間で打切りという習慣になっていた。

 月給の額にもよるだろうが、超過勤務手当はかなりの収入となるので、無闇にこれを抑えられることは反対であったし、屡々この手当が欲しいばかりに日中はだらだら仕事を延ばして退出時間を遅くするようなこともあったし、この手当は大切な給与の一部と考えられてもいた。当然である。

 長時間労働が主たる原因で亡くなった人の屍に笞打つ気持は全くないが、そのような人は他に選択の道はなかったか、どうか。何か別の原因があったのではないか(例えば、家庭内の不和など)、よく調べてみる必要があると思っている。

 要は働く本人の考え方が一番問題なのであるし、いくら辛くっても長時間労働をしても給与が多い方がよいと思っている人もあると思う。一律に法律をもって、罰則つきで上限を規制する必要があるのか、という疑問を拭えないのはいけないだろうか。

 無暗に規制すると、仕事を家にもって歸る、しかも、手当も貰えないことになる懼れすらあるのではないか。