28・9・29

 酒は二十才からということになっているが、戦前われわれは高等学校(旧制)に入学したら、当然のように酒を始めたものである。

 ビアホール、バー(と言っても一杯一〇銭のいわゆるテンセン・スタンドなど)、おでん屋、すし屋などなど。

 銀座でも一円ダマを持っていれば飲めたものである。

 当時学校は駒場にあった。歩いて渋谷に出て、食傷新道、百軒店と毎晩のように出撃していた。

 百軒店などは地ゴロが占領していたが、当時学生も元気が良くて、乱闘騒ぎなどをもして、何人かのけが人も出したが、安心して飲める場所となった。

 渋谷で飲んで、歸りも歩いて、寮歌高呤、近所の人はうるさかっただろうが、あゝ又かと言うように大目で許してくれていた。

 家庭教師のアルバイトをやって、家からの送金の他に月二〇円ぐらいを稼いでいたが、あら方、酒で消えていた。本も買った。

 良き時代であった、のかもしれない。