28・8・27

 具体的に実情を書いてもいいが、差支えがあるといけないので、ボカシて筋の話にしておきたい。

 ことは、例えば入場料一人千円の券を買い損なったがどうしても入場したいというので、例えば三千円で他人から(まあ普通はいわゆるダフ屋)から買ったとする。訴える人があって、裁判所は違法であるとして、その取引を認めないことが起った。売りつけた人間を違法としたのである。

 前から、私は、何故高く売りつけたらいけないのか、よくわからなかった。物の売買である。どうしても欲しい人が、表示価格の何倍の金を払おうと一向に構わないではないか。私も後楽園球場でダフ屋にふっかけられたことがある。私は、既に入場券を持っていたから、買う必要もなかったが、どうしてもこの巨人阪神戦は見たい、切角来たから、例え何倍しようと買いたいというなら、買わしたらいいではないか。不当な利益をダフ屋が手にすることはおかしい、ということかも知れないが、そんなことは日常茶飯事いくらでもあるのではないか。

 魚や果物にしても、仕入れの何倍にも売っているではないか。古本屋では稀覯本は何倍にでも売っているではないか。一ケ一万円もする西瓜もべら儲けではないか。あんな二、三万円で古道具屋でホコリを被っていた茶碗を一〇〇万円で売るとは何だ。

 売買は自由であり、価格も自由であるのが、現代社会の原則ではないか。取引を停止させたり、価格の訂正をさせたりする必要はないどころか、一体何の権限、理由でそうする必要があるのか。

 要らなきゃ買わなきゃいい、高過ぎるなら値切ればいい。皆が買わなきゃダフ屋も仕事にならない。

 だから、目くじら立てて取締りに狂奔をする必要はない、と思うが、如何か。

 その代わり、売買による利益はしっかりおさえて、税金で取り上げたらいいのではないか。