曽野綾子さんから頂戴した作品集の一冊である。
主な登場人物だけで三十人余あるという西紀前のヘロデ王をめぐる物語である。
前七十三年頃―前四年。通称大王。ユダヤのハスモン王朝の宰相アンテイパトロスの二男でガラリアを統治し、ユダヤの領主となるが、バルテアの侵入でローマに逃れ、アントニクスの後ろ盾でユダヤ王となる。さらにアウグストゥス帝と結び、首都エルサレムに大神殿を建立、政治を安定し、経済を発展させる。しかし、猜疑心が強く、妻、三人の息子、縁者を謀殺する。
とにかく多種多様ないろいろな人物が登場するので、応接にいとまがないが、ヘロデ王の心と身体の動きに注目して読めば、なかなか面白いし、それよりも何より資料をよく整理したものだと思う。