TPPへの加入が果たして日本経済にとってプラスかどうかは、正直言ってよくわからないところもあると思うが、現状でもし日本が脱けるとなるとどういうことになるのかを考える。

 日本も加入し、注文すべきところは注文して成果を得ておいた方がよいと思う。

 もうおんば日傘のような措置を期待してもそれを認める世間の空気ではないし、第一、そんなことをいつまでも続けていては、外国に対抗して体力をつけて行く農業には育たない、と思う。

 私は、主計局の主計官として異例の四年にわたり農林担当の主計官をさせてもらった。本当にいい経験をしたと思う。北海道から沖縄まで各地も見せて貰った。農業基本法の制定も農林省の若手の課長と本気で取り組んで検討もした。農は国の本である。というのは嘘ではない、とくに国土の八割以上も山地で、恵まれていない日本にとって、一億を超える人間にどうして腹のふけれるような食糧を確保するか、というのは問題なのである。

 日米開戦となった昭和十六年の翌年から六年間も兵役に服していた(うち半分は戦後、ソ連邦に抑留)私にとっても切実感をもって考えざるをえない大問題なのである。

 食糧の自給率を高め、どういうことがあっても食糧だけは確保をするというのは国の使命である、と思う。

 日本の総人口が減って行く情勢を喰い止めることは、今一生懸命少子化対策を進めているが、どう見ても不可避である。

 それを前提にして小学校の統合、教員数削減、病床数の減少などが切実な問題として議論されているではないか。食糧を必要とする人口が減ると同時に農業従事者の数も更に減少すると思わなければならない。

 もともと一人当り、一戸当りの農地の面積が少ない日本であるから、それが増える、というより増やさざるを得ないと思うが、農家の経営も大事であるし、農業の経営方法も、例えば株式会社の導入その他も当然考えて行かなければならない、と思う。

 貯金と保険で息をついているだけの農協ではダメなことはわかっているがその改革がなかなか進まない。 

 戸当たり農地面積が二五〇ヘクタールのパラグアイの日系移民の不耕起農業なども視察して来たが、農業の素人が余計なことを言うのは控えるが、何か大きな転換を考えないとダメではないか、という思いは間違っているだろうか。

 TPPへの加入は一つの大きなチャンスと思って、農業の改革も進めて貰いたいと思う。