27・6・15
久しぶりに明治座に行った。岸恵子の「わりなき恋」(自作自演)という朗読劇を見るためであった。数年前に出版された時にベストセラーになって、随分世間を騒がせた本の朗読として前人気も素晴らしく満席との噂であった。
二階席三列目で見た。光も音響も、舞台の配置も岸の服装もよく出来ていたし、ピアノの演奏、ライトニングも上々、とくにミモザ花の影は見事であった。
岸さん本人の実話を小説の形にしたと言われているだけに、話の進行も無理はないが、も一つ何だか情感に乏しいのである。尤もだと思うように盛り上げていく過程がリアルであるだけに何処かウソっぽくなる点がある。それを彼女に求めるのはムリであると思うからもう言わない。ただ、「クキ」という男性の名前の発音が気になった。朗読は全く標準語で進行しているのに、主人公の名クキの発音だけが、語尾が上がって、関西風なのである。実在の人も関西人だったのか、と帰り道で余計な憶測を話し合っていた。
変に生きる人に自分の心を見せろと言うことがムリなのかも知れない。
いっそ二人が結ばれて、別の悲劇が発生する、といった形の方が劇としては面白かも知れない。が、それを書けと言うのは、ムリな注文であろう、と思うが。