藤沢周平の十の短篇を集めた文庫本。江戸の街は縦横に川が流れ、橋がかかっていたのではないか、と思わせるようで、橋はいわば駅と言ってもいいような街の生活の地理的節目のようなものだったかな、と思う。

 全部とまではいかないが、彼の小説は目についたものはかなり読んだ。

 「出会いと別れ。市井の男女の喜怒哀楽の表情を瑞々しい筆致に描いた「時代小説」(帯)、やくざも泥棒も、いろいろな人間が登場してくるが、何かそこにジーンと来るような人情が通っている。本人も本当にまともな人柄だったのだろうな、と思わせる本。