27・5・24

 司馬遼太郎がノモンハンでソ連軍と戦った戦車隊員としていかに日本の戦車は戦闘能力のないダメなものであったかを激しい口調で語るとともに日本が近代戦を他国に展開する能力を欠いているのに、その事実を知らずして、知っていても国民に隠して戦争をしかけ、いかにあえなく惨敗をしたかについて、率直に、時に率直過ぎるくらいに激しく述べている本である。

 時には珍しく彼らしくなく平静さを失っているか、と思われるくらいに激しい言葉も用いている。

 ソ連軍とは一度も戦ったこともないが、昭和二十五年八月十五日の終戦後不当にもソ連国内に抑留された将兵の一人として私も言いたいことは山程あるが、この戦争がいかに愚であったかは、全く同感と言わざるをえない。

 このいう本は、もっと広く戦後の国民にも読んで貰いたいと思う。そして、その愚を二度と繰り返すことのないようにして貰いたいと思う。その意味からも推賞する。

 他九篇、いずれも佳。