26・9・22

 昭和四十年に発行された獅子文六の集英社の作品集である。

 中野好夫が「オトナの小説」と評しているが、本当にそんな気がする。彼が戦前書いた新聞小説などをいくつか思い出す。「南の風」、胡椒息子」、「自由学校」、「てんや、わんや」、「大番」、その他も。

 昭和十四、五年頃、旧制一高の文芸念に彼と岸田国士の二人が来て、掛合万才みたいな楽しい対談をしていたことをよく覚えている。戦争は始まっていたが、学園はまだ自由な世界であった。

 読み返してみたい作家である。