26・7・21

 七月十九日付の読売新聞の記事である。一応そのまゝ引用させて貰う。

 「開門なら制裁金」高裁も国の抗告棄却板挟み解消せず

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門調査を巡り、福岡高裁の永松健幹(たけもと)裁判長は18日、国が開門した場合に1日49万円の制裁金支払いを命じた長崎地裁の「間接強制」決定を支持し、国の執行抗告を棄却する決定をした。

国は同日、最高裁の判断を仰ぐため、高裁に許可抗告を申し立てた。高裁が抗告を許可すれば、最高裁で審理される。

国は今回、「開門に向けた対策工事に着手できておらず、長崎県の協力が得られない状態で開門することはあり得ない」と主張した。しかし、永松裁判長は18日の決定で、国が対策工事予算を計上し、地元の合意を得ずに一部工事への着手を試みたことなどを指摘し、「開門する恐れがある」と判断した。

開門調査を巡っては、国が開門しない場合、佐賀地裁が同額の制裁金支払いを命じ、福岡高裁も6月にこれを支持。国は最高裁に抗告しており、開門してもしなくても引き続き支払い義務を負う。漁業者らへの支払い義務は6月12日から生じており、制裁金額は18日現在で1813万円に上る。

農水省幹部は「国は板挟みになっており、最高裁には(二つの間接強制について)統一的な判断を早く示してもらいたい」と語った。林農相は「非常に難しい状況。関係訴訟で主張を述べるとともに、粘り強く関係者との話し合いを呼びかけ、接点を探る努力を続けたい」とコメントした。

 開門反対派弁護団の木下健太郎弁護士は「国に開門を命じた福岡高裁が、間接強制を認めた意義は大きい」とした上で、「最高裁には我々の主張に沿った判断で統一してほしい」と述べた。開門賛成派の馬奈木昭雄弁護団長は「国が選択すべきは、開門によって漁業被害を防止し、同時に農業被害などが生じない万全の対策を取ることだ」とする談話を出した。

関門問題を巡る主な司法判断の流れ

関門派(漁業者側)

開門反対派(営農者側)

開門を命じる判決=決定

(福岡高裁)

開門差し止めの仮処分命令

(長崎地裁)

   ↓

    ↓

開門しない場合は制裁金

(佐賀地裁)

開門した場合は制裁金

(長崎地裁)

   ↓

    ↓

開門しない場合は制裁金

(福岡高裁)

開門した場合は制裁金

(福岡高裁)

   ↓

    ↓

最高裁で審理中

最高裁で審理?

農林省ならずとも、こう司法の判断が分かれては本当に困ってしまう。

諌早湾干拓事業は昭和三十七年度予算において新たに河北潟(石川)、中海(島根・鳥取)とともに大長崎地区として当時、大蔵省主計局で農林予算を担当していた私が国営千拓事業に採択したものである。

 勿論、三十七年度以前からあの地区の干拓事業の話はあった。最初は有明湾全部を干し上げて農地造成を行なうという壮大な計画も議論されたが、流石それでは大きすぎるということになって諌早干拓事業として縮小、着工されることになった。

 農林省農地局では、大規模な干拓事業として八郎潟の千拓を国営で実施していたが、それが出来上ったら技術陣を中海に移し、そこから又有明に持って行くという構想が出来ていた。

 諌早干拓については、干拓を予定どおり実施すべしという営農者側と漁業のために開門を要求する側と激しく対立し、訴訟となっていたが、それぞれ地、高裁で異なる判決が出て、最高裁で審理中となっているのである。

 私から言わせれば、この様におかしなことになって来ているのは、そもそも行政側がフラフラして来たからなのであって、当初計画した通り干拓工事を進めればよかったと思う。

 半世紀の間に食糧事情等の変化によって、干拓計画の修正が必要となって来たことも否定しないが、国土面積狭隘の日本であるから、ともかくも土地を造成した上で、改めて必要な対策を考えるべきではなかったか、と思う。

 それにしても、最高裁の判断を早く仰ぎたいものである。