26・6・8

 五木寛之の得意なありえない物語であるが、不思議にありそうな気にさせる力がある。

 隠岐の島後の島の民宿旅館に勤める自他ともに認める醜い女性牟田口アカネが何故か死ぬつもりで旅に来て泊った男草影真人(クサカマコト)という美容外科のとてつもない名医に出あった。

 その名医の言うまゝにモスコウへ飛び、彼のグループの四人の医者から二年かけて完全に理想の美人に作り上げられ、名前も沢木涼子となった彼女はクェートの王子デリーに愛されともに世界中を旅する。父がイラクのフセイン大統領の軍隊に逮捕され国に戻ったデリーと別れて再び隠岐の島後に旅する。その彼女に昔彼女に惚れ抜いて自殺した筈の山岸猛男が再び現われて、最後は島の摩天崖の絶壁から身を投げ死ぬ、という筋書き。

 も少しうまく紹介できればいいが、とにかく面白かったの一言で済ましては悪いような小説である。