26・5・17
もう八十年も昔の話である、中学に入ったばかりの私は手仕事が好きで、雑誌も少年雑誌の外、「科学と模型」などを愛読していた。
模型の電車などを動かすにはパワー・トランスが要る。高いし一つ自分で作ってやろうと思った。
ブリキの缶を集めて、手書きで線を書き、同じ型の板を何十枚も作り、両面にニスを塗る。ブリキの板は木槌で叩いて曲りやひずみをなをす。積み重ねて銅線を捲く。この作業はちょっとしたもので、銅のエナメル線、一八番線と六〇番線を少しずつ、緩まないようにキッチリとブリキの芯に捲いて行く。
さて、やっと完成した、と思って一〇〇ボルトの電灯線と繋いだら、プチッと音がしてヒューズが飛んで了った。
いろいろテストをしてみたらブリキの鉄芯が薄すぎたり、雑誌ではよくわからない箇処があった。それを調整して行くには大へんであったが、又、模型を作る楽しみでもあった。
モーター、ラジオ、ヨット、モーターボートなどいろいろな模型を作って、将来は電気技師になることが望みであったが、それは遂に果たせなかった。
でも、未だに機械は好きである。時に故障することはあっても、機械は人を騙さないから。