26・5・6

 渡辺淳一さんが四月三十日亡くなったという記事を見た時は本当にあれと思った。というのも病気されているとのニュースは全然見ていなかったからである。

 彼の小説はかなり前から、全部とは言わないが、かなり沢山読んでいた。

 新しい情痴文学など評されたが、男女関係の描写はまことにうまいものであった。

 御本人の実体験がかなり入っているという噂も本当かと思うが、「阿寒に果て」のヒロインは実在の人物だと思うし、彼のいくつもの小説の底を流れている本当に愛する人を失った悲しみがそくそくと傳はってくる。

 あの女性のイメージがかって石坂洋次郎が「若い人」で描いた女性江波恵子とダブって浮ぶのは私だけではない気がする。

 渡辺さんは直木賞の選者として極めて厳しい人であったとも聞いているが、自分の書いたものをおろそかにしない人だったのだろうと思う。

 とにかく、惜しい作家を又一人喪ったのは淋しい。