26・3・2

 半藤一利の力作である。

 日ソ不可侵條約を結びながら、日露戦争の復讐を思い、その戦争以前のソ連領土を取り戻したいと考えているスターリンと連合国側にソ連を引っぱり込みたい米英、ルーズベルトとチャーチルとのヤルータ会談後戦局の終局的不利からバカみたいに連合国側との和平交渉の仲介をソ連にかけていた日本の政府及び軍の首脳部の種々の工作の失敗など当時の事情をいろいろな史科から記述している。

 われわれのよく知らない事実なども記されていて大へん参考になった。

 ソ連は、米国が原子爆弾を投じする前に開戦の通告をすることに焦っていたことなども、あゝそうだったかと思うような事実であった。

 ソ連軍が満州に侵入してさんざん働いた非道な行為の一部は当時北鮮にいたわれわれも眼にしているところがあったが、改めて火事泥的に満州をあらしまくったソ連軍の悪逆無道の振舞いには怒りを禁じえない。これすべて負けて了えばおしまいよ、という言葉で片付けられるものであろうか。