26・2・9

 外国で盗聴が問題になっている。大統領の会話が盗聴されたが、もう盗聴はしないとか、いろいろ約束ごとをしょうという記事を見た。

 しかし、考えてみれば、盗聴される危険はどうしたってついて回るものであって、一々断って盗聴をするといったものでもないし、そもそも大事な通話は秘密にしようとするが、同時に他の人はその通話を聞きたい。

 言うまでもなく国内においても、外国との間においても、情報合戦は不断に行われている。いかなる情報も、まして大事なものであれば、出来るだけ

速やかに、かつ正確にキャッチしたいと思うのは当り前である。ことに外交関係が尖鋭化している時などは、相手国がどういう動きをしているか、一刻も早く情報を得たいと思う。一瞬でも早く情報を得た方が主導権を握ることも当然ある。

 従って、そのためにはあらゆる手段を駆使して秘密の情報を手に入れようとする。であるから盗聴などは当り前に行われると思うなわなければならない。

 昔、「会議は踊る」という映画があった。ドイツのウーファーの作品である。戦争の終った後の国際会議がウィーンで開かれ、各国の首脳の会議が毎日延々として開かれ、そこで会議は「踊る」となっていたのであるが、その映画のなかでメッテルニヒと目される人物が、時々会議の模様を伝声管を使ってキャッチする場面が出てきた。電気器具の発達してない頃である。その場面を鮮明に覚えている。メッテルニヒはその情報をもとに裏で指導権を握っていたのである。

 そんな昔のことではなく、先の大戦においてわが連合艦隊司令長官山本五十六将の乗機が南方で米軍機に擊墜されたのも、わが軍の暗号電報を米軍に解読され、その飛行ルートを知られたのが原因だとされている。

 こんな一々の例示を書かなくとも、とくに国際間では情報合戦が激烈なのであって、盗聴をするとか、しないとか、約束をしたって守られる筈がないと思う。

 お互いに盗聴されないように秘術を盡して情報を守り、他人の情報は何とかして手に入れようと努力をする。そのことを根本において情報合戦をして行くより仕方ないのではないか。盗聴をしない約束なんて、守られる筈がないではないか。