26・1・27

 漱石の長女「筆」の子、つまり孫の半藤一利の小説(?)である。小説といっても漱石の家庭における日常の動作をよく見える人々からの伝承が多いのであるが、人間漱石の知られた、又は知られて面をよく描いている。

 本人は、この本は「わが輩は猫である」の贋作のつもりであるが、かなりそれらしく見える点は成功であろう。

 かんしゃく持ちで、わがまゝで、時に今で言う家庭内暴力もふるう人物であるとも承知している。とにかく誠実な人柄らしく、率直に自分の意見を言うあたり、やはり明治の人らしくはあるが、愛すべき人柄ではなかったのか。沢山の優れた弟子を育てたことでもわかるとおり教育者でもあった、と思う。

 そんな漱石像をこの本がどれだけ本当の姿に近ずけたのか、はよくわからないが、とにかく、何かいい気持で読み終えた。

 世間の在り様に無闇に妥協しないで生きて行こうとすれば、どうしてもいろいろ摩擦は生じてくる。しかし、そこで狂暴にならないのは、学問を修めた人の養われた人格なのではないかと思う。

 とにかく、近頃寝ながら読んで楽しかった一冊である。