25・10・19
ホメロスのイリァス、オデュツセイア、ヴエルギリウスのアュイネスの三つの敘事詩をもとに阿刀田高の「微頭徹尾、私の(新トロイア物語)と称すべきものを書いている(あとがき)。五六二ページにわたる大著である。
トロイの滅亡から脱出した銀髪のアイネノアスがエスぺリア(今のイタリア)の地に三、四艘の船に乗って漂着したが、その地の王女ラウィニアと結婚し、テベルの東を流れるヌミキ川の河畔に新しい城寒の地を見出し、新しいトロイアの建設が始まった。
この二人の間に生れた銀髪のユールスが建設した町がアルバ・ロンガであり、これが古代ローマに先立つ伝説的な古都である。そのユールスの未裔が狼に育まれた双生の兄弟ロムルスとレムスであるが、両雄並び立たず、相争った結果勝ったロムルスが、その名をとって古代ローマ建国の始祖になった、という。その建国は西歴前七五三年と言われている。
著者自ら述べているごとく、真言部や浜長は全く彼の創作であるし、とにかく三千年以上も昔の異国の物語なので歴史的な信憑性はとにかく、久しぶりに面白い物語を読ませて貰った。
若い頃ギリシャ哲学にこったことがあって、プラトン対話集などを原語と日本語を並べて読んでいたこともあって、一度西洋文明の発生の地といわれるギリシャのパルテノンの丘に立つアクロポリスを見たいと思っていた。昭和三十年(一九五五年)の夏、その望みがかなった時は本当に嬉しくて、その当時アテネ在住のたった一人の日本人、藤公使と日の沈むまで戸外であのちょっとやにくさいギリシャのワインを飲んだことを思い出す。
ギリシャに関する関心は衆議院議員になってからも続いていて、日本、ギリシャ友好議連の設立もし、その会長となり、又、ギリシャの文化庁に招かれて遺跡の見学旅行で三日間のエーゲ海のクルーズに参加したことも忘れられない。