25・10・10
水上勉原作の同名の小説(直木賞)の映画化である。川島雄三監督。厳しい戒津の殿堂たるべき寺の住職慈海(三島雅夫)と愛人・里子(若尾文子)との間に日夜をわかたず傍芳無人にくり拡げられる、ただれ切った愛欲の場面を冷たく見守る少年僧(高見国一)の恐るべき復讐を描く衝撃作(DVD箱裏の解説)である。ふとしたことから、里子に抱かれた少年僧が慈海を殺して死体を他人の棺桶の底に沈めて一緒に土葬して了う、という物語である。
水上勉の作品はかなり沢山読んでいる。彼には「飢餓海峡」、「五番町夕霧楼」、「越前竹人形」、「湖の琴」、「一休」、「良寛」など名作があるが、なかでもこの小説は彼の力をいかんなく発揮した作品であると思う。なお、これも若くして京都の寺に小僧に出されて苦労した彼水上の自身の体験も背景として充分織り込まれている。