25・7・20

 さっきから前の林の中からホーホヶキョとうぐいすが鳴いている。鳴き始めのホー、ホー、とたどたどしい声ではなく、もう立派に完成(?)されたホーホヶキョである。何とも澄んだ美しさである。姿は無論見えない。

 うぐいすでは、私は強い思い出でがある。未だに忘れられない。私が戦災で焼けた西竹の丸(横浜)に住んでいた頃である。その頃、私は空気銃を愛用していた。中折れ式の銃で、鼓彈を使えば薄い木の板ぐらいは貫通する力があった。それは専ら雀を打つのに使っていたが、小さい的である。そんなに当る、というものではなかった。

 ところがある日、隣りの家の垣根でうぐいすがよい声で鳴いていた。私は、何気なくその方向に向けて空気銃の彈を発射したら、パタッとうぐいすの声が途切れて了った。その後再び声が聞えなかったところを見ると、私の放った彈がうぐいすに当った、としか考えられなかった。

 私は、大へんに後悔をした。全く、何の罪もない小鳥に殺生をしたことはそれこそ悲しかった。爾来、私は、空気銃を使うのを止めた。

 うぐいすの声を聞くと、そのことをまざまざと思い出す。今でも心が痛む。