25・6・28
妻の連れ子ながら学生同士の内ゲバで殺された子を持つ大学教授の柚木が殺した学生の姉、京都の老舗の扇屋の女社長と恋に陥るという上巻を読んで、このブログで、決して目出たし、目出たしの結論にはなるまいと書いておいた。
小説である。どうも、こういう場合、お目出たい結論となっては読者は裏切られたような感じになるのではなかろうか。
教授は妻と離婚して彼女と晴れて結ばれる日を切望しながら、ある日出張先の北海道で心臓の発作で亡くなってしまう、彼女は妊娠三ケ月、その事実を、そしてどうしても生みたいことを彼の死の前に傳えることも出来ずして、彼女独り雄々しく立って行く決心をする、という結末である。
渡辺淳一はこういうものを書かしたら確かにうまい、実体験談である部分も多いのではないか、と誰かが書いていたが、そんなことはどうでもいい。作品だけが読む対象となる。